移動や出勤ができなくなり、以前なら直接会っていた用件でもバーチャルで会話せざるを得なくなった。会議もネット上へと移行し、飛行機を使わずにコミュニケーションをとる方法を人々が学んだことで、出張関連市場は動きを停止した。
出張の中止により、航空会社は大きな経済的打撃を受けた。出張者が旅客に占める割合は12%ほどだが、収益に占める割合はなんと75%に上る。
航空業界は当然ながら迅速な復興を切望しており、昨年7月に行われたグローバルビジネストラベル協会(GBTA)加盟者に対する調査では、米国での国内出張が秋までに再開するだろうと考えていた人が半数近くに上った。一方、半年以上かかると考えていたのはわずか3分の1だった。
もちろん、海外出張となると話は全く違う。多くの航空会社が国際便の運航を停止しており、渡航制限が長期化している国も多い。
コロナ流行を受けて閉鎖されていたオフィスに戻ることにはためらいがある人は多いものの、会議や対面での商談のために飛行機で移動することに対する抵抗感は比較的少ない。これは、仕事では対面の会話に明確なメリットがあることが大きい。実際に会ってコミュニケーションを取ることには、さまざまな利点があることが広く知られている。簡単な握手でさえも、協力の基盤となる関係構築に重要な役割を果たすことが多いのだ。
出張の経済の重要性
また、経済にとっての出張の重要性も過小評価できない。経済分析企業オックスフォード・エコノミクスの調査によると、出張費1ドルあたりの経済効果は12ドル50セントに上る。また、ハーバード大学の研究チームによる研究でも、出張が経済に果たす重要な役割が浮き彫りとなった。
研究チームはマスターカードの決済データを使い、世界の出張の流れをマッピング。その過程で、各国でのノウハウの流入・流出を示した「ノウハウ指標」を作成した。
研究チームは、出張によるノウハウの流通が国の経済に大きな影響を与えると結論。出張の減少により、世界GDPが5%近く減少したと指摘した。ただ、コロナ流行前の日常に戻ることのメリットは明らかであるものの、出張をする側は誰もが再開を喜んでいるわけではないようだ。
例えば欧州では、飛行機ではなく鉄道の旅を選ぶ人が増えているとみられることが分かっている(特に、自分専用の個室がある寝台列車が好まれている)。米国でも同様に、旅客機利用再開への反応は生ぬるく、航空業界はコロナ流行前の水準に戻るのは2024年頃になると予測している。