World Restaurant Awards審査員

ノンアルコールカクテル「インプレッション」

酒を飲むことで生産性が低くなったり、健康を害したりという個人的な問題のみならず、事故や犯罪につながるという社会的な側面からも、その経済損失が近年、より注目されるようになってきた。一方、上手に付き合いさえすれば、酒は人に高揚感や幸福感をもたらすものであり、古代より文化の一翼を担ってきたことも、紛れもない事実だろう。

そんななか、体質的にアルコールが飲めないわけではないが、あえて飲まない選択をする「ソーバーキュリアス」な人々が増えている。英語でソーバーは「しらふ」、キュリアスは「好奇心、興味」という意味だ。

「ソーバーキュリアス」を実践して感じたこと


世界各地で料理とのペアリングイベントを行うなど、国際的に活躍するバーテンダーバーテンダーの南雲主于三氏も、一時的にではあるが、あえて「ソーバーキュリアス」を実践したことがある人物だ。

「お酒が好きだからバーテンダーという仕事を選んだ部分もあるのですが、ソーバーキュリアスという言葉を耳にするようになった2018年の年末から、試しに4カ月ほどお酒をやめました。当時は、多い時に一晩で10〜15杯くらいは飲んでいたのですが、生産性が落ちる上、飲み過ぎかもしれないと思ってやめてみたのです」



南雲氏は、しばらくの酒断ちを通して見えてきたものがあるという。それは、ノンアルコールの選択肢が非常に少ないこと。酒と同じような味の複雑さや深み、香りが感じられるノンアルコール・低アルコールカクテルの存在意義を改めて感じたという。

仕事上の理由で再度酒を飲むようになったものの、ソーバーキュリアスとして過ごしたことで、現在は自宅では飲まず、外でも飲みすぎることがなくなり、「アルコールとの適切な付き合い方ができるようになった」というメリットも感じているそうだ。

南雲氏が都内で経営する5店では、2017年からノンアルコールカクテルを1〜2割メニューに入れており、年々オーダーする人も増えているという印象があるという。

「今の若い世代は効率性を重んじるため、食事も短時間で効率的な栄養摂取ができれば良いと、簡単な食事とサプリメントで間に合わせる人もいるほどです。そこまでではないにしても『酔うことで時間を無駄にしたくない』と考える人たちや、健康的にお酒と付き合いたいと考えている人たちに対して、選択肢を広げるという意味があると思います」

既存のカクテル愛好者たちではなく、飲まない人たちの層をどう取り込み、アルコールの市場を拡大するか。飲まない人々に選択肢を提供することで市場を保つ、という動きが出てきているということだ。

文=仲山今日子

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