現在、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの略)と呼ばれる巨大IT企業によって、ほとんど独占状態のウェブ世界。私たちのデータは、これらの巨大企業に回収され、管理されている。この中央集権的な状態は「ウェブ2.0」と呼ばれる。この体制に「民主主義革命」を起こし、より個人が強い力を持つ世界を創りたいと渡辺は考えている。
「目指すはウェブ3.0の世界です。データをメガプラットフォームが管理するのではなく、本来データが帰属するべき個人や法人が、データを自分たちで管理する。ビットコインが企業や国に左右されることなく、個人で資産を動かせるようになったのと同じように、データも個人や法人に帰属されるべきなんです。ブロックチェーンの技術で人間中心のデータ社会を構築したいと思っています」
少しあどけなさも残る弱冠25歳の眼差しに迷いはなかった。
何をやりたいかわからなかった大学時代
いまではゴールへと着実に進む起業家だが、数年前、日本で学生生活を送っていた渡辺は、将来何をしたいかがまだわからなかったという。そこで自分のやりたいことを見つけるために、まず海外に飛び出してみることにした。
写真=曽川拓哉
「インド、中国、ロシアなどで貧しい子供たちに教育を与えたり、それらの地でゴミ拾いをしたりしていました。恵まれた日本では気づきにくい、貧富の格差や環境問題を目の当たりにして、地球規模の課題解決に興味を持つようになりました」
大規模な課題を解決に導くことは簡単ではない。まず社会において、ある程度の実績がないと駄目だと渡辺は気づく。その当時、権力を持っていたのは大国の政治家やIT起業家。ドナルド・トランプ、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾスなどだ。
しかし、マスクやペゾスたちのようにいまからインターネットを使ってビジネスを始めるには遅すぎる。そこで、インターネットの次世代テクノロジーと言われるAIやブロックチェーンに興味を持つようになる。
なかでも、社会基盤そのものを変える力があるブロックチェーンの魅力にハマり、大学在学中にシリコンバレーへ留学することを決める。ブロックチェーンの第一線で活躍する場所に近づきたい。そんな思いから、ブロックチェーンの格付けでトップ50の企業のなかから、自分が住むところから通いやすい8社を選び、それら全てにインターンシップを申し込んだ。
そのなかのクロニクルドが彼を気に入り、渡辺は5カ月間のインターンを経験する。そして契約期間が終わっても、社員として働いてくれと会社から言われるまでになる。