プログラミング、ウォール街で今後必須のスキルに

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一流投資銀行ゴールドマン・サックスのテクノロジーエバンジェリストだったマーティー・チャベスは、同行を退職する前、プログラミングを学ぶことがトレーダーにとって「英語で文を書くこと」と同じくらい重要になるだろうと予言した。

金融大手シティグループは先月、この予言を反映するかのように、約2500人ものプログラマーを採用する計画を発表した。採用されたプログラマーは情報技術(IT)部門ではなく、トレーディング・投資銀行部門に配属される。これは、ウォール街で起きている急速な変化を示している。

無秩序な人間トレーダーの時代は今、終わりを迎えようとしている。シティグループの2019年の取引のうち、約75%は電子的に行なわれた。取引はかつて専門職が行うものだったが、そうした時代はほぼ完全に幕を閉じている。シティのインスティテューショナル・クライアント・グループ(ICG)で技術・オペレーション世界責任者を務めるスチュアート・ライリーは、こうしたプログラマーを世界中の拠点に配置すると述べている。ライリーは「テクノロジーを使ったデータ活用の改善により、人間のできることが拡張されている」と語っている。

シティを含む各行ではプログラマーに加え、数字・科学に強い従業員が必要とされている。求められているのは、モデルやアルゴリズム、ソフトウエア構築のため数学的な思考を行う人材であり、直感に基づいた取引はもはや過去のものとなった。

技術系の人材獲得を目指しているのはシティだけではない。大手銀行やヘッジファンドなどの金融サービス企業もこうした人材の採用を急ピッチで進めている。銀行が特に多額の資金を費やしている分野は、テクノロジーだ。各行は毎年、100億ドル(約1兆1000億円)以上をテクノロジーに費やしている。

各行の経営陣は、この投資をコスト削減施策として捉えている。テック系従業員の多くはコストが低い米国内の都市や外国で勤務するため、給料や不動産費用、税金を節約できるのだ。最終的に、人工知能(AI)やロボット、高度なソフトウエアや技術は、機械的作業の担当者から経験豊富な高給取りのトレーダーまで、多くの従業員を置き換えることになるだろう。

ゴールドマン・サックスは昨夏、トレーディング部門に100人以上のエンジニアを採用すると発表した。同行トレーディング部門でエンジニアリング共同責任者を務めるアダム・コーンは、プログラマーやデータサイエンティスト、エンジニアを採用することで、トレーディングプログラムを改善し、トレーディング事業の一部を自動化したい考えだ。同行はウォール街でトレーディング関連活動のリーダー的存在とされており、技術系人材の採用に軸足を移す動きには他の銀行も追従することは間違いない。

大手銀行の採用情報ページを見ると、技術関連職が多数を占めていることが分かる。そのうちの多くは、勤務地がニューヨーク市外に置かれている。テクノロジーの導入により、金融機関は大きなコスト削減を達成できるかもしれない。技術系以外の人材の多くは失業するだろう。ウォール街がこうした方向にかじを取る中、プログラミングのスキルを持たない人が仕事を見つけるのは難しくなる。

このことから得られるメッセージは、非常に明確だ。ウォール街で働きたければ、チャベスの助言に従い、プログラミングを学ぶしかない。

編集=遠藤宗生

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