この生産方法を使えば世界中のどこでも農作物を栽培して地元に供給できる。ストーリーが創業したプレンティ社は最近、約2エーカーの面積での垂直水耕栽培により、720エーカーを使った従来農法を超える収穫量を実現した。
果実や野菜栽培の水やりと肥料やりにロボットとアルゴリズムを導入している同社は昨年10月、1億4000万ドル(約145億円)の資金調達ラウンドを完了。投資総額は5億ドル(約520億円)となり、こうした技術に対する期待の高さを浮き彫りにした。
同社と同じくサンフランシスコ地域を拠点とするアイアン・オックス・ロボティック・ファームズなどの他企業も、植え付け、肥料やりから収穫までの各段階をロボット化し、同様の成果を上げている。
高密度の栽培と生産サイクル全体の管理により、害虫や病気の発生を低減すると同時に、運送コストも削減できる。結果として、主にかかるコストは人件費(従ってロボット化の必要性が高まる)と、設備の初期費用、光熱費になる。光熱費に関しては、ソーラーエネルギーやLED照明技術が進歩しているおかげで効率が上がり、コストが低下している。
2017年に創業したフィンランドのアイファームは、昨年8月に実施した最初の資金調達ラウンドで400万ドル(約4億2000万円)を集めた。同社は欧州と中東で約50のプロジェクトに技術を提供。栽培面積の合計は1万1000平方メートルに上る。現在、約120品種の栽培の自動化を支援しており、2025年までにはこれを500品種とすることを目指している。同社によると、対応品種は毎月10品種のペースで増加している。
また、昨年5月末に260万ドル(約2億7000万円)を調達したライズ・ガーデンズなどは、管理ソフトを含めた家庭用水耕栽培キットを販売。組み立てには1時間もかからず、3種類のサイズを用意するというイケア方式の商品だ(なお、イケアも水耕栽培キットを販売している)。またドイツのインファームは、小売店やレストラン向けの製品を提供し、投資家の注目を集めている。
さらに、エデン・グリーン、バワリー・ファーミング、ブライトファームズ、フレイト・ファームズ、エアロファームズなど多くのプレーヤーが参入しており、室内垂直農法の未来が示されている。これは従来農法と全く異なる手法であり、あらゆる工業施設、さらにはコンテナや、必要であれば宇宙空間でも設置が可能だ。私たちは将来、こうした革新的な農法で栽培された野菜を食べるようになるのだろうか?