持続可能な食料システム 次なる鍵は「発酵」にあり?

「発酵」が救世主に?(Getty Images)


第3の柱である発酵は、最近まであまり注目されていませんでした。ところが、古くから存在し、今や現代の食料システムを変えようとしている発酵という生産方法が、その価値にふさわしく注目を集め始めています。

「発酵」の利点


発酵代替タンパク質の生産方法は、主に3つあります。

微生物発酵は、長年にわたって利用されてきました。微生物の酵素により、ある種の食品を別の種類の食品(例えば、ビールやヨーグルト)に変えたり、バイオ医薬品業界では、ワクチンや薬を生産したりするのに用いられてきた方法です。同じ技術が、今では新世代のタンパク質、脂肪、その他の機能性成分の生産に利用されており、非動物性の食肉、卵、乳製品の生産を可能にしています。

ホールバイオマス発酵は、クオーン社の肉を使わないマイコプロテインのナゲットやパテ、切り身でご存じの方も多いかもしれません。アットラストフード社やミーティ社など、ホールバイオマス発酵を使って全筋肉製品の生産に取り組んでいる革新的スタートアップもあります。

第3の方法は、精密発酵。カスタマイズされた微生物を用い、多くは動物性の食品に含まれている特定のタンパク質を、動物の繁殖、給餌、屠畜を行うことなく大量に生産します。最もよく知られている例は、ほぼすべてのチーズに含まれるレンネットというタンパク質です。

レンネットは、従来、屠畜された子牛の胃から得られるものですが、現在では、特殊な酵母菌株を使って生産することが可能になっています。パーフェクト・デイ・フーズ社は、精密発酵を利用してホエーやカゼインタンパク質を製造しており、最近では、 非動物性の乳製品をベースにしたアイスクリームを販売するスピンオフブランド、ブレイブロボットを立ち上げました。クララフーズ社はこの技術を使って卵のタンパク質を製造しています。

どの発酵方法も、これまで以上に効率的なタンパク質の生産を可能にします。より広くいえば、植物由来、培養、発酵といった代替タンパク質産業の柱は、相互補完的であるため、企業は、現在の畜産業により生産される食品に比べ、環境的により持続可能で資源集約度の低い製品を生産することができます。

例えばインポッシブル・フーズ社が、バーガーに「肉のような」味を再現するために利用していることで知られる物質「ヘム」には、レンネットの生産に似た微生物発酵のプロセスが用いられています。こうした製品は代替タンパク質の全分野で使えるため、業界では非常に重要になります。

発酵製品のもうひとつの利点は、植物由来のタンパク質や培養肉と同様に、抗生物質を使わず、効率的かつ持続可能な方法で生産できることです。
次ページ > 急拡大する市場

文=Natalia Suescun Pozas, Lead, Meat the Future, World Economic Forum;Caroline Bushnell, Corporate Engagement, The Good Food Institute

ForbesBrandVoice

人気記事