コロナ格差、「持てる者と持たざる者」浮き彫り? セレブに治療薬優先投与の現実

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トランプ大統領の顧問弁護士ルドルフ・ジュリアーニ氏のコロナ陽性が12月6日、確認され、ワクチンならぬ「治療薬」投与の優先順位について論議が起きている。

ジュリアーニ弁護士は陽性判明後に入院、トランプ大統領の陽性判明時に使用された「モノクローナル抗体」を投与されたが、「自分はセレブだから入院できたし、この薬が飲めた」とWABCラジオの取材で話した。

治療薬はわずか「200万人分」


ジュリアーニ弁護士は、「もらったコロナ抗体カクテルを飲んだ瞬間、気分が完全によくなった」とも話したと英国ガーディアン紙は報じている

米国FDAは11月22日、トランプ大統領やジュリアーニ弁護士も飲んだこのモノクローナル抗体の緊急使用許可を発表したが、対象は「悪化あるいは入院の可能性が高い、軽度から中程度の患者」とされているのみだ。

そして、このモノクローナル抗体の製造元であるスイスのロシュ・ホールディング社によれば、「来年3月末までに年間最大200万回分を生産できる」が、「200万」は、WHOがこの9月に発表した、「1週間に全世界で確認された新規感染者数」とほぼ同じ数だ。

つまり本治療薬はきわめて希少である上に、FDAが発表した投与対象範囲はきわめて広いのである。そして、どの患者に優先的に投与するかは各医療機関や各州にゆだねられているのが現状だ。

投与に「抽選」も


米国医学協会発行のオープンアクセス医学ジャーナルWeb版「Jama Network Open」によると、州の健康管理局の監視の下、「抽選」で決められることもある。この抽選は、年齢などの属性と診断結果が加味されるものの基本的には無作為に実行される。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、トランプやその側近へのモノクローナル抗体優先投与に対しては、米国内の医療倫理学関係者たちも警鐘を鳴らし始めたという。FDAの緊急使用許可以来、一般患者への投与の優先順位づけに関して、行政筋やヘルスケア関係者の苦悩がますます重くなっているからだ。

ジュリアーニ弁護士は今回の米大統領選を巡り、トランプ大統領がテキサス州はじめ接戦州4州の選挙結果を無効とするよう連邦最高裁判所に求めた訴訟を全面的に任されており、その報酬として1日あたり2万ドル(200万円強)をトランプに求めたとも報じられている。

新型コロナ禍が「持てる者と持たざる者」の格差を浮き彫りにすることは事実のようだ。

ジュリアーニ弁護士は記者たちに対し、「政治家はマスクなどに神経質になりすぎだ。新型コロナは『治る病気』なのだから」とも話している。

文=石井節子

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