魚貝類に混入した「マイクロプラスチック」で健康被害の可能性

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休日などに最寄りのビーチを訪れてみれば、海のプラスチックごみ問題の深刻さがよく分かるだろう。残念ながら、海に流れ込んだプラスチックは簡単には分解されず、細かな断片に壊れることで、マイクロプラスチックと呼ばれる物質に変わっていく。

海の動物たちは、あらゆる大きさのプラスチックを食べ物と混同してしまう。例えばウミガメは、透明なビニール袋をクラゲと間違えることで知られるが、より細かなマイクロプラスチックは、魚類や貝などの全ての海の生き物が飲み込んでしまう可能性がある。

マイクロプラスチックは、生き物の消化器に残り続ける傾向があるため、ムール貝やカキなどの濾過摂食を行う魚介類を人間が食べた場合、マイクロプラスチックを摂取してしまう可能性が高まることになる。実際、2018年に実施された研究では、貝類を大量に食べる人は年間約1万1000個のマイクロプラスチック粒子を摂取していると推定された。

しかし、マイクロプラスチックを運ぶ可能性があるのは貝類だけではない。動物の体内に取り込まれたマイクロプラスチックは、消化器だけでなく循環系や周囲の組織に移動することが示されており、その場合は、人間の食べ物にプラスチックが含まれる可能性がさらに高まることになる。

幸いなことに、最近の研究では、魚類の体内ではこのような移行はまれであることが示唆されている。ただし、プラスチックの粒子自体が魚肉に含まれる可能性は低いが、BPA(難燃剤)やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が魚肉に残り続ける傾向も指摘されている。

保健当局の推定によると、人間の体内に取り込まれたマイクロプラスチックのうち、腸から体内のリンパ系や循環系まで移行するのは、0.3%未満だという。そして、これらのマイクロプラスチックのうち、ごくわずかなものだけが体内の臓器に影響を与えるという。

それでもなお、体内に取り込まれたマイクロプラスチックが人の健康に及ぼす影響は、十分に解明されていない。海塩やビール、蜂蜜など、私たちが口にする食品の多くにマイクロプラスチックが蔓延している今、人類がとるべき最善の行動は、プラスチック汚染を少しでも軽減していくことなのかもしれない。

編集=上田裕資

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