eスポーツが秘める「社会的価値」

グルーブシンク代表の松井悠

グルーブシンク代表の松井悠

eスポーツはいま、ビジネス以外の可能性も提示し続けている。長くeスポーツに関わってきたグルーブシンク代表の松井悠は、その現在地をどう見ているか。


ご存じのように、いまやeスポーツは非常に大きな注目を集める一大マーケットに発展しました。eスポーツ元年といわれた2018年から現在までで、eスポーツへの新規参入は激増。日本国内のeスポーツシーンをとりまとめたカオスマップを見ると、18年6月版から19年11月版まででeスポーツに参入した企業は約6倍に増えています。ゲームタイトルを提供するパブリッシャーやチーム、トーナメント、スポンサーのみならず、最近ではeスポーツ専門学校も増えています。また、KADOKAWA Game Linkageの発表によると19年の国内eスポーツ市場規模は前年比127%増の61.2億円、23年には150億円を超えると予測されています。

私は今年2月まで、「ドラゴンボールファイターズ」や「コール オブ デューティ」といった人気タイトルのイベント企画や運営のため海外を飛び回っていたのですが、コロナ禍によって3月以降に予定されていた大規模なリアルイベントが続々と中止に。弊社も売り上げに少なくない影響がありました。しかし、あらゆるイベントがオンラインシフトされ、ライブストリーミングサービスで配信したり、オンラインに最適化したコンテンツを制作するなどして対応しています。市場全体としてコロナ以前の予測通りに伸びるかはわかりませんが、それでもeスポーツは巨大なポテンシャルを秘める魅力的な分野であることは間違いありません。

しかし私はそれ以外の側面にも大きな魅力を感じています。それは、eスポーツの裾野の広さ・懐の深さです。

例えば、地方活性化。最近、群馬県では経済的・文化的発展やIT人材育成のための手段としてeスポーツに着目。会場費も都心よりは安く抑えることができ、若者に親和性が高く、全国大会も開催される予定です。昨年、理事に地元のマスコミ各社が名を連ねる「群馬県eスポーツ連合」が発足されました。ある程度メディア露出が期待できることもあり、県をあげて非常に力を入れている分野なのです。また、神戸市ではシニア世代の健康管理のためにeスポーツを導入することが先日発表されました。他にも、徳島県が「マチアソビ」というイベントの一環としてeスポーツを導入、富山県では歴史ある地元の酒蔵を大会会場として借り、参加者に日本酒を振る舞って地元の良さを知ってもらうといった取り組みもあります。
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構成=石原龍太郎 写真=平岩 享 会場提供=Red Bull Gaming Sphere Tokyo

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