eスポーツが秘める「社会的価値」

グルーブシンク代表の松井悠


こんなこともありました。岡山県に「DOTA2」というゲームを愛する牡蠣漁師さんがいます。彼は当時日本ではあまり注目されていなかった「DOTA2」を盛り上げたいとゲームのオンライン配信や地域での大会主催などを続けていたところ、ある日「DOTA2」のパブリッシャーであるアメリカの大手ゲーム企業から「あなたのドキュメンタリー映像を撮影し、世界大会で流したい」と連絡がきたのです。実際にその作品は会場で流れ、海外では「クレイジーなフィッシャーマンがいる」と話題に。いまは牡蠣漁師兼ゲーマーとして世界の舞台で活躍されています。

現在eスポーツは、サッカーや野球のようにどこか1つの連合や協会が取りまとめをしているわけではないので、他分野との掛け合わせが比較的容易です。地方活性化にも活用できれば、牡蠣漁師さんのように、「好き」を原動力として動いていれば新たなキャリアが拓けてくることもあるでしょう。しかも、フィジカルスポーツとは異なり、国籍や性別、年齢はもちろん、健常者もそうでない方も平等に楽しめる土壌があるのです。その懐の深さ、そして裾野の広さはeスポーツ特有の良さではないでしょうか。

とはいえ、競技となると現在は男性視点での大会設計やイベント演出が主流。女性をはじめ、多様な人々が関わる余地はまだまだあります。生粋のゲーム好き、そしてeスポーツに関わる人間として、今後はよりダイバーシティのあるカルチャーをつくっていき、社会に対してビジネス的な側面以外の価値も提示していけるようにしたいと思っています。


まつい・ゆう◎ゲーマー、ライターを経て22歳のときにグルーブシンクを設立。イベントの企画運営、コミュニティの構築、講演活動など「ゲームをつくる」以外のゲームに関わることを幅広く行っている。

構成=石原龍太郎 写真=平岩 享 会場提供=Red Bull Gaming Sphere Tokyo

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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