五十肩とは、肩の痛みと運動制限を伴う疾患で、肩関節の周囲に起こる炎症が原因だ。医学用語では肩関節周囲炎という。腱板損傷や石灰沈着性腱板炎によることもあるが、多くは原因不明だ。
痛みが酷い炎症期、痛みは引いてくるが、肩が動かしにくい拘縮期を経て、肩の動きが戻る回復期となる。発症から回復まで、数年を要することもある。患者の約4割は、発症後4年を経過しても症状が残っているという報告もある。
ちなみに、英国では五十肩のことを「frozen shoulder」と言うが、これは拘縮期のことを指している。多くの患者が、肩が一定以上動かせず、「肩が凍ったよう」に感じる。現在、筆者は拘縮期にあり、毎日、この状態が続いている。
五十肩の治療法に差異はない
五十肩はありふれた疾患だ。成人の1割程度が発症する。男性より女性が発症しやすく、右肩より左肩がおかされやすい。糖尿病の人はリスクがあがる。では、どんな治療法があるのだろうか。
自分が当事者になると、いろいろ調べるものだ。私は努めて五十肩の論文を探して読むようになった。そのなかで、最近権威ある英国の医学誌『ランセット』に、五十肩の臨床試験の結果が発表された。
この臨床試験では、五十肩と診断された503人の患者を、理学療法(リハビリ)、肩関節内視鏡手術、麻酔科徒手的授動術(麻酔科で医師が肩関節に力を加えて動かし、拘縮した関節包を伸ばす)という3つの治療法にランダムに振り分けて、その有効性を調べた。
一般的には五十肩の患者のほとんどは理学療法で治療されるが、一刻も早く回復したいと希望する人のなかには、手術などの侵襲的治療に期待する人もいるだろう。
意外にも、3つの治療法で回復には大きな差はなかった。この臨床試験では、五十肩の重症度を「オックスフォード肩スコア」で評価している。0点がもっともひどく、48点が完治だ。3つの治療法とも治療開始時には18点だったが、半年くらいで36点にまで戻り、その後はゆっくり回復していた。
もちろん、3つの治療のどれを選択するかは、患者ごとに事情が異なり、個別対応が必要となる。ただ、一般論として、理学療法が手術などの侵襲的治療に劣ることはなさそうだ。
筆者は、この論文を読んで、知り合いの整形外科医に電話した。彼も全く同意見で、YouTubeにアップされているリハビリの動画を紹介してくれた。五十肩対策の動画は数多くアップされていて、なかなかわかりやすい。
その後、動画を見ながら、毎日リハビリを続けた。少し楽になったような気もするが、やはり痛みは変わらない。痛めた左肩を一定以上動かすと痛みが走る。鎮痛剤を常用するまではいかないが、可動域は制限され、寝るときも左を下にできない。