こうした現象は、2008年の金融危機など、過去の深刻な経済危機が発生した際には起こっていない。2010年頃まで続いた大不況(グレート・リセッション)では、フォーブス長者番付「フォーブス400」に名を連ねる富豪たちが、被った損失を取り戻すのに3年近くを要している。
今回の調査結果は、米国全体で650人という、ごく少数のビリオネアたちの資産に焦点を当てている。それが腹立たしく感じられるのは、パンデミックをめぐる緊急措置として発令されていた「家賃滞納者の強制退去を禁止するモラトリアム措置」が年末に終了することになっており、700万人近い米国人が立ち退きの危機に瀕する状況にあるからだ。
ビリオネア650人のうち29人は、2020年3月18日から11月24日にかけて資産が倍増した。また、ビリオネアの数は36人増えている。資産減少や死亡によって11人がリストから外れた一方で、47人が新たに仲間入りしたためだ。
資産額が驚くほど増えた著名ビリオネアもいる。アマゾンのジェフ・ベゾスは、3月18日から11月24日にかけて資産が700億ドル増となり、現在の総資産額は1824億ドルだ。最も驚異的な伸びを見せたのが、テスラとスペースXの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスクだ。3月18日から11月24日にかけて、マスクの個人資産額は246億ドルから1262億ドルに増え、413%の増加率となった。
今回の分析によると、米国のビリオネアが保有する資産は現在、合計で4兆ドル近くに上る。これは、米国の世帯資産総額のおよそ3.5%にあたる。ビリオネアの総保有資産は、米国の下位50%の世帯(およそ1億6000万人)が保有する資産をすべてまとめた額の2倍となった。
米連邦準備制度の推定では、米国の個人保有の資産額は現在、およそ112兆ドルだ。上位1%がそのうちの34兆2300億ドルを、上位2%から10%の範囲の人が43兆900億ドルを、10%から50%の範囲の人が32兆6500億ドルを保有する。下位50%の保有額はわずか2兆800億ドルだ。