このニュースを受けて、バイオンテックの株価は9日午後に14%の急騰となり、共同創業者でCEOのウグル・サヒン(Ugur Sahin)と、大株主のドイツ人兄弟、Thomas StruengmannとAndreas Struengmannの2人の保有資産は一気に膨らんだ。
サヒンの保有資産は株価の上昇で5億ドル以上の増加となり、約44億ドル(約4630億円)に達した。Struengmann兄弟の資産も合計で15億ドル近く上昇し、2人の保有資産はそれぞれ約104億ドル(約1兆900億円)と推定されている。
現在54歳のサヒンは、2008年にStruengmann兄弟から出資を受けて、ドイツのマインツでバイオンテックを創業した。兄弟はサヒンが2001年に設立したバイオ医薬品企業Ganymed Pharmaceuticals AGにも出資しており、同社を2016年にアステラス製薬に4億6000万ドルで売却していた。
Struengmann兄弟が最初にヘルスケア分野で巨額のリターンを得たのは、彼らが1986年に設立したジェネリック医薬品メーカーHexal(ヘクサル)を、2005年にノバルティスに約70億ドルで売却した時のことだった。
ファイザーとバイオンテックが実用化を目指すワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)を利用して、免疫系にコロナウイルスと戦う抗体を作らせようとしている。これは画期的な手法だが、競合のモデルナ社も同様のアプローチでワクチン開発を進めており、同社の株価も9日午後に9%上昇した。
ケンブリッジ本拠のバイオテクノロジー企業、モデルナの株価も1月から急上昇している。同社のワクチンは現在、治験の最終段階に入っており、11月末までその有効性を確認し、12月にもFDAに承認を申請する予定という。
モデルナCEOのステファン・バンセルの保有資産は現在、24億ドルとされている。2010年のモデルナの創業時に500万ドルを出資した、ハーバード大学教授のティモシー・スプリンガーの保有資産も13億ドルを突破した。
スプリンガーと同時期にモデルナに出資した、MIT教授のボブ・ランガーの保有資産も、推定9億3000万ドルとされている。