新たな研究結果によると、どうやらそれはなかなか難しそうだ。高い運用実績をあげている株でも、株価が一直線に上昇していく銘柄は稀であり、乱高下することもありうるという。この研究結果は、たとえ長期的に見て「勝ち組」となる銘柄を正しく選んでいたとしても、投資家にとって、ボラティリティとの付き合いは避けて通れないことを改めて示すものだ。
株式市場の好況を支える銘柄は一握り
今回、分析を行ったアリゾナ州立大学に所属する研究者ヘンドリック・ベッセンビンダー(Hendrik Bessembinder)は、これまでの研究においても、意外に思える分析結果を発表している。それは、平均的な株式の利益率は冴えないもので、米国の短期国債の利回りを割り込むこともしばしばだというのだ。
そう聞くと、こんな疑問が浮かぶかもしれない。株式の平均的な利回りがそれほどパッとしないのだったら、S&P 500をはじめとする株価指標が、あれほど力強い伸びを示すことができているのはどういうメカニズムなのか?と。
過去10年の株式市場は、「大化け」した一握りの銘柄が引っ張ってきた
株式市場が高いリターンを実現できるのは、ごく一部の企業の株が、以前と比べて倍々ゲームで株価を上昇させ、とてつもなく大きなリターンをもたらしているという事情によるところが大きい。
例えば、過去10年間の株式市場における富の創出は、アップルやVISA、JPモルガン・チェース、アマゾン、フェイスブックなどの企業が牽引したものだ。どの企業も、2010年から2019年までのあいだに、投資家に多大な富をもたらした。これらの企業の大幅な株価上昇が、株式市場におけるその他の銘柄の下落をカバーしてきた格好だ。
長期保有に適した株にもリスクは潜む
だが、こうした高パフォーマンス株のここまでの道のりを振り返ると、ずっと右肩上がりに上昇してきた例はほとんどない。例えば、アップルは1980年の新規公開以来、株価が70%以上下落したことが3度ある。株価を順調に上げてきたアマゾンも、ピーク時から90%の株価下落を経験している。つまり、たとえ株価がピークからどん底へと急降下しても、それは長期保有の投資方針が誤っていることを示すサインとは限らない、ということだ。
実際、長期保有で最高のパフォーマンスを示している銘柄の多くは、まさにこうした、身もすくむような下落を経験している。そのため、過去の事例を参考にするなら、長期的に利益を得るためには、短期的な損失はむしろ必然であると言えるケースが多い。