しかもこれは、最近の株式市場の動向に限った話ではない。エクソン・モービル、AT&T、ゼネラル・モーターズは、誰もが知る大企業で、過去には株式市場で他を圧倒するパフォーマンスを上げた時代もあった。しかしどの企業もこれまでに、ピーク時から少なくとも3分の1に相当する、大幅な下落局面を経験している。
「勝ち組」にとっても対岸の火事ではない下落局面
こうした下落局面の過酷さを如実に示すのがウォルマートだ。同社は1990年代を通じて最も高いパフォーマンスを残した銘柄の1つだったが、それでも、1993年から1996年にかけて、ピーク時から3分の1以上の株価下落を経験している。ウォルマートは、90年代全体で見ると長期保有でリターンをもたらす「勝ち組」銘柄と言えるが、10年間のうち実に3年間は株価が下落していたことになる。
この事例では下落局面が比較的長く続いたが、株価がそれよりも速いペースで、ピークから底に達することもある。例えば、フェイスブックの株価は2012年の夏、わずか2カ月で40%以上下落した。だが、先ほど挙げた他の企業と同様に、フェイスブックも長期的に見れば、非常に優れたパフォーマンスを示し、投資家に多大なリターンをもたらしている。
この分析を行ったヘンドリック・ベッセンビンダーはアリゾナ州立大学に所属する研究者。論文の全文は、SSRN(Social Science Research Network)で読むことができる。
この分析結果を踏まえると、次に自分のポートフォリオにアマゾンやアップル、マイクロソフトのような銘柄をもっと組み込みたいと考える時には、これらの企業の株を保有する投資家であっても、時として大幅な株価の下落を耐える必要に迫られる、ということを肝に銘じるべきだろう。長期投資に向いた「勝ち組」銘柄も、大幅な株価の下落と無縁ではない。長期的に安定的にリターンをもたらす株式を保有すれば、ポートフォリオをボラティリティから守ることができるかというと、必ずしもそうとは限らないということだ。