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Tang Ming Tung/Getty Images

世界中の人々が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを心待ちにしている。ギャラップの調査によると、米国では4人に1人が、ワクチンが接種できるようになるまでは普通の生活に戻りたくないと考えている。

ワクチンはいつ完成するのか、安全性はどのようにして確認するのか、優先的に接種されるのは誰なのか──。ワクチンをめぐるこうしたニュースがメディアを支配している。

ワクチンがこれほどまでに注目されているのは、ワクチンができれば普通の生活に戻れる日が早まり、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)やマスク着用などの感染予防対策が不要になると、多くの人が期待していることの表れだ。

新型コロナウイルス感染症によって、とてつもない苦しみや苦痛を強いられ、終息に向けて世界中で膨大な時間とリソースが費やされていることを思えば、こうした楽観論が生まれるのはやむを得ない。

しかし、ワクチンに期待をかけるのは危険かもしれない。行動科学が明らかにしてくれたように、人間は「楽観バイアス」の影響を非常に受けやすい。楽観バイアスとは、ポジティブなできごとが起こる可能性を過大評価し、ネガティブな出来事が起こる危険性を過小評価する傾向のことだ。

新型コロナウイルス感染症の場合、ワクチンが開発されるだろうと過度に楽観視すれば、リスクに対する認識にゆがみが生じ、安全ではない行動が助長されかねない。そうなれば、パンデミック(世界的大流行)による苦しみが長引くことになる。

異なる状況を設定して行われた多数の研究で幾度となく指摘されているのが、「人間はしばしば、バランスを欠くほどバラ色のメガネ(楽観的な視点)を通して自分自身を見てしまう」ということだ。

ワクチンを接種した人は、偽りの安心感を抱いて、ついマスクの着用やソーシャル・ディスタンシングをやめたり、人数を制限せずに大勢で集まったりするかもしれない。感染を予防するそうした行為は、免疫を得たと考えている人にとっては、煩わしく不要に思えるだろう。

早まった判断による行動には、いっそうの警戒を抱くべきだ。それには理由がいくつかある。まず、新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種しても、免疫がどのくらい持続するのかはまだわかっていない。それどころか、新型コロナウイルスの抗体ができるのは一時的で、そのあとは急速に弱まる模様だ。

また、ワクチンが正確に何の予防になるのか(自分が感染するのを防ぐのか、それとも他人を感染させるのを防ぐのか)、効果はどのくらいあるのか(完全に予防できるのか、それとも部分的なのか)といったことも不明だ。

ワクチンの大量生産と配布に必要な時間を考えると、具体的にいつになったらワクチンが全員に行き渡るのかも不明だ。こうしたことすべてによって、ワクチン接種を済ませた人が早まって安全な行動や予防対策をやめてしまうと、起こりうる弊害が増すだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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