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久々に、日経平均株価指数が2万円超えをするなど、回復傾向にある日本の株式市場。
だが今こそ、「株価ではなく、投資先の価値に目を向けるべき」と筆者は説く。


日経平均株価指数が4月10日に2万円を超えた。数字そのものに特に意味があるわけではないが、メディア的には報道価値があり、世間の関心も高い。一方で、2万円という数字を見て「バブル」という言葉が脳裏をよぎる人たちもおり、個人投資家の間には株式を手放す動きが見られる。残念である。

 私はなにも、株価の調整が起きないと思っているわけではない。むしろ逆で、調整に対して警戒を怠ってはいない。ただ、それは常に用心すべきこと。そもそも、投資先のことをよく知らずに、株価水準だけで売買する習慣は、実りある投資成果を生まない。中身を確認しないで、箱だけ売買するのに等しいからだ。

 温故知新。往年のファンドマネジャーの名著の新訳版が出版された。『ピーター・リンチの株の法則―90秒で説明できない会社に手は出すな』(ダイヤモンド社刊)という本である。

 大学を卒業して金融業界に入った私は、ファンドマネジャーという職業へのイメージがわかなかった。そんなとき、手にしたのが旧訳版だった。それ以来、リンチは私のアイドルであり、目標だ。

 彼は、四十数億円のファンドから運用を始め、最終的に2兆円近い運用残高まで増やした卓越した腕前のファンドマネジャーであり、営業マンである。私が見る限り、成功したファンドマネジャーというのは例外なく、優秀なセールスマンだ。なぜならば、影響力を行使するためにはそれなりに大きな運用残高が必要で、それを達成するには優れた運用能力と営業力が不可欠だからである。

 ピーター・リンチは1977〜90年までの13年間、米投資信託会社フィデリティの旗艦ファンド「マゼラン・ファンド」を運用し、1,800万ドル(編集部註:当時のレートで約40億円)の運用資産を140億ドルまでに増やした(なんと、770倍だ!)。運用利回りも年率29%で基準価額も13年間で25倍にした。これはすごい!
私も2008年に1.5億円だった「ひふみ投信」を、15年には300倍の450億円にまで増やしている。とはいえ、発射台が小さいのでリンチにはまだまだである。基準価額は7年で3倍だから、ここでも及ばない(リンチの13年間まであと6年あるので、なんとか挽回したい!)。

クレヨンで描けるアイデアか?

そのリンチは、法則をつくるのも上手だ。私は『スリッパの法則―プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方』(PHP研究所刊)という本を出しているが、なかには「リンチの法則」に影響を受けた法則もある。そのうちのいくつかをご紹介しよう。

・誰でも犯しがちな大きな過ちの一つは、相場が調整に入りそうだということで、それを避けようとして、株式や株式投信を売ってしまうことです。また、次に来るであろう調整局面を待って株を買おうと、現金を寝かせておくのもまちがいです。たとえて言えば、熊をやり過ごそうと身を隠していて、牡牛とともに走る機会を失う、ということになるでしょうか

 熊とは弱気相場、牡牛とは強気相場のこと。売買のタイミングを相場の方向性で考えるのではなく、よい企業を発掘することに集中するのが大事なのだ。特にこれは、日経平均株価指数が2万円を突破した今こそ肝に銘じたい。

・株価の今日や明日、または来週の動きは、単なる気まぐれでしかない
 相場の短期的なトレンドを当てることはほぼ不可能だ。それは“ギャンブル”にほかならない。しかし、実際に成長する企業に投資をすることこそ、投資を真の意味で投資たらしめることである。

・株価は、しばしばファンダメンタルズ(編集部註:経済の基礎的指標)とは逆の方向に動くが、長期では株価の方向と収益の持続性は同じ流れである
 なぜ長期投資が有効なのかというと、収益の上がる会社に投資をしたら時間が味方してくれるからだ。


・クレヨンで絵に描けないアイデアには投資するな

 これは有名な格言。要するに、投資すべき理由を簡単に説明できない企業の株を保有してはいけない、ということだ。

・優良企業に投資しているのなら、時間はあなたの味方になる。我慢できるからである

 投資では、「時間を敵にしない」ことが重要だ。相場は上下動するし、個別の会社は相場の影響を必ず受ける。しかし、長期的には株価は収益に収斂(しゅうれん)していくので、着々と売り上げと利益を積み上げていく優良企業への投資は大きなリターンを上げることができるのだ。

・買った株が上がったということだけで、あなたが正しいことにはならない。買った株が下がったということだけで、あなたがまちがっていたことにもならない。ストーリーをチェックするのをやめ、自己満足するような勝者にはならないでもらいたい

 株が上がると天才だと思い、下がると自己否定の塊になる―。個人投資家だけでなく、プロの投資家でもこのような人をたくさん見てきた。価値ではなく、価格を追うからである。
 では、会社の価値とは何か? 長期的には、「会社の利益」である。勤勉な経営者と卓越した商品やサービス、販売方法が顧客の信頼を獲得し、彼らが喜んでその企業にお金を払うから売り上げが伸び、利益が増えるのだ。投資とは、そうした一生懸命な企業をサポートする行為なのである。そして、そのような「投資の王道」こそが驚くような収益を生む。

 いかがだろうか。ピーター・リンチのほかにも、ウォーレン・バフェットやベンジャミン・グレアムなど先達に学ぶべきことは多い。プロとして仕事に臨む真摯な姿勢や、ピンチになってもユーモアを失わない精神的な強さなど、投資を専門としない人も大いに参考になるはずだ。

 今こそ、価格に目を奪われることなく、“ 価値” に目を向けていこう。それが、「フォーブス ジャパン」の読者諸賢にふさわしい資産家への道だと確信している。

文=藤野英人 / イラストレーション=ピエールルイージ・ロンゴ

 

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