経済・社会

2020.11.04 12:00

トランプが任命したNASA長官に「バイデン勝利でも続投を」の声


イーロン・マスクとも良好な関係


ブライデンスタインは、これまでのNASA長官とは異なり、民間セクターの活用に積極的だ。2019年3月に行われた上院の公聴会では、「NASAが開発中の大型ロケットであるスペース・ローンチ・システム(SLS)は開発スケジュールに遅れが生じている。NASAとしては、目的を達成するためにあらゆる選択肢を検討する必要がある」と述べ、商用ロケットを使って月を目指すことを検討中であることを明らかにした。

ブライデンスタインは、スペースXのイーロン・マスクCEOと些細な言い争いをしたことはあるが、良好な関係を維持している。同社はNASAの宇宙飛行士を軌道に運ぶ上で重要な役割を担っており、マスクとの個人的な繋がりは非常に重要だ。

スペースXは、2020年5月にNASAの宇宙飛行士を乗せ、民間企業としては初めて有人宇宙飛行を行った。他にも、ブライデンスタインは民間企業に月着陸船の開発を委託したり、月で採取したサンプルをNASAに販売する提案を企業から募集したほか、アルテミス計画への参画をスタートアップに呼び掛けている。

数々の失政が指摘されるトランプ大統領だが、ブライデンスタインのNASA長官への指名は数少ない成功事例だと言えるだろう。ブライデンスタインは幅広い層の政治家から支持されており、次期大統領にバイデンが選ばれたとしても、ブライデンスタインをNASA長官に据え置くべきだという意見は多い。

航空宇宙アナリストのJeff Foustは今年初め、「Space News」の中で次のように述べている。「ブライデンスタインは、共和党と民主党の両方から強い支持を得ている。宇宙業界は、バイデン陣営にブライデンスタインの留任を静かに働きかけている」

David Lindgrenも、政治メディア「The Hill」で次のようにコメントしている。「政党同士が対立する中にあって、ブライデンスタインは党利を優先させることなく、国際社会で常にNASAと米国の役割を擁護してきた。大統領選の結果に関わらず、今後もブライデンスタインはNASA長官としての任務を果たすべきだ」

ブライデンスタインの留任が実現するのか、或いは彼自身がバイデン大統領のもとでNASA長官を務めたいと考えているかは不明だ。彼の留任が多くの人に支持されることは間違いない。新政権下でNASAが再び混乱に陥ることを防ぐ意味でも、ブライデンスタインの続投を歓迎する人は多いだろう。

編集=上田裕資

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