オードリー・タンも推薦 映画「わたしの青春、台湾」が占う台湾、香港、中国の未来

傅楡監督の『私たちの青春、台湾』は、10月31日より全国で順次公開

先進的なコロナ対策を推し進め、世界から注目を集めた台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン(唐鳳)。ITの分野ではすでに有名だった彼女が、政治の世界で注目を浴びることとなり、蔡英文政権において35歳の若さで入閣するきっかけとなったのが、台湾の「ひまわり学生運動」だった。

2014年3月18日、中国との市場開放に関するサービス貿易協定に対する、当時の与党であった国民党の強硬採決に怒った学生たちが、国会に突入し、議場を占拠した。強硬採決と議場占拠という事態に対して、台湾国内では激しい議論が巻き起こった。

その時、議事堂内と外部をネット中継で常時繋いでいたのが、オードリー・タンだった。「g0v零時政府」のメンバーとして、すでにオープンガバメントへの取り組みにも参画していた彼女は、この24時間のネット中継で、あらゆる意見の可視化を行った。

議場を占拠してから23日後、立法院でのサービス貿易協定の発効はストップし、市民の抗議活動が実を結ぶ。その後の国政選挙では、民進党が躍進、2016年の蔡英文政権誕生につながった。これが「ひまわり学生運動」のあらましだ。

「この学生運動は、1980年代以降の台湾において、最大規模の学生と市民による抗議運動で、現在に至るまで台湾の社会に深い影響を及ぼしている。運動の主力であった多くの若者は、痛みや熱い思いを体験し、あらためて人生の進むべき道を決めていった」

自らのもその1人として、この運動に携わったオードリー・タンは、当時を振り返ってこう語っている。


台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン

撮影中に監督自身も成長


映画「私たちの青春、台湾」は、そのひまわり学生運動を描いたドキュメンタリーだ。

2011年、傅監督は、台湾の学生運動の中心人物、陳為廷(チェン・ウェイティン)と、中国からの留学生としてこの運動に参加していた蔡博芸(ツァイ・ボーイー)の2人と出会う。

その後、陳為廷の運動は、市民からの注目を集め始め、蔡博芸の台湾の民主化運動をレポートしたブログは大陸でも人気となる。当初、傅監督は、この2人を追うことでドキュメンタリー作品を撮影しようと考えていた。そこに起こったのが、2014年のひまわり学生運動だった。

占拠中の議場内では、学生たちの会議にも入り、監督は撮影を続けた。議場占拠の中心人物としてマスコミの注目を集め、立法会議員への出馬を視野に入れていた陳為廷と、留学生の立場で大学の自治会の会長選挙に立候補を目指していた蔡博芸。監督は、映画の結末としては、2人の成功とハッピーエンドを想定していたのだが……。
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文=小川善照

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