ネットフリックスの価値観やミッションについてはカルチャーデック(culture deck)という彼らの有名なスライド集で最初に知ったのですが、今回の本でもやはり独自の視点からは学ぶところが多く、とても興味深く思います。ちなみに、ネットフリックスのカルチャーデックは2009年に公表されて以来、世界中で2000万回近く閲覧されています。テック界の企業文化にインスピレーションを与えてきた伝説的なものと言えるでしょう。
ですからヘイスティングス氏の新しい本が発売されたときも、すぐさま購入しました。ちょうどその日本語版が先週の木曜日に発売されたので、皆様にもぜひおすすめしたいです。そこで、今回の記事では『No Rules』から学べる重要なポイントについていくつか紹介したいと思います。
「ファミリー」ではなく「スポーツチーム」を作る
昔はほとんどのビジネスが家族経営で、世襲で引き継がれていました。そうした経緯から、企業文化のことを「ファミリー」と表現し、安心して働ける職場環境や会社への忠誠などを大事にする価値観が多くの業界で自然と広く受け入れられてきました。ファミリー文化の企業では一体感やお互いへの責任感を長期にわたって育むことができます。もちろん、これは同時に、身内への評価が甘くなってしまうということでもあります。足を引っ張っている社員がいたとしても、「家族」なら見放すことができないのです。
その点、スポーツチームでは常に最高のパフォーマンスを追求しているので、そういった甘さはありません。トッププレイヤーを上手く取りまとめ、互いに切磋琢磨することでチームを最高の結果へと導かなければなりません。責任感や連帯感、仲間意識も当然重要ですが、どれも「勝つ」という最終的な目的と引き換えになるものではありません。
プレイヤー自身も、それぞれがチームに欠かせないポジションについていることを理解しているので、チームとして勝つためにお互いに対して高いパフォーマンスを求めます。もし結果を出せていないプレイヤーがいれば、他の誰かにそのポジションを取って代わられることでしょう。
これに関連して、本書では「タレントの密度」というテーマが繰り返し強調されています。トップレベルのパフォーマンスを叩き出せるような「タレント」は、やはり同じくらい優秀な人たちと働きたいと思うものなので、経営者は何よりもまずエース級の人材ばかりを職場に揃えることを優先するべきだという考え方です。ネットフリックスでは実際、「普通の結果を出す人には、報酬として十分な解雇手当を」などと言われているそうです。
業界最高水準の報酬を与える
スポーツチームと同じように、企業でもやはり高い報酬を与えているところのほうが高いタレント密度を作り出すことに成功しています。
ネットフリックスでは、クリエイティブ系のポジションなどに対して業界最高水準の給与を支払うことを主義としています。業界トップレベルの人材は平均的な人材と比べて軽く10倍以上の成果を出せるというのが彼らの考えです。採用担当者としては、「その給料で3人分雇えるじゃないか」と考えてしまうかもしれませんが、必ずしも多ければ多いほどいいとは限らないのです。