新型コロナウイルスパンデミック後の世界では、在宅勤務が常態化することにより、オフィススペースの需要は10~20%減少する可能性がある──9月22日に発表されたスペシャルリポートの中でそう述べたのは、バークレイズの株式アナリストである、ニューヨークのライアン・プレクロー(Ryan Preclaw)とロンドンのポール・メイ(Paul May)だ。
この推定値について彼らは、「適切に慎重(appropriately cautious)」なものだと考えている。推定の根拠となったのは、オフィスの稼働率と、高層ビルの職場に戻っていない人々の数に関する現在入手可能なデータだ。
ただし、商業REIT(不動産投資信託)の空売りに走る前に、バークレイズの不動産チームによる但し書きに目を通そう。彼らは、パンデミック後の都市生活については「高レベルの不確実性」があると認めている。オフィス需要が10~20%よりもはるかに多く低下する可能性を示唆するエビデンスもあれば、わずかな変化にとどまるというエビデンスもある。要するに、質問する相手と、どの都市の話かによるのだ。
エビデンス
ひとつめの鍵となるエビデンスとしては、雇用者と従業員の両方が在宅勤務を気に入っていて、どちらも、将来的な従業員の在宅勤務拡大に前向きであることがあげられる。
だからといって、マンハッタンからデスクがなくなるわけではない。スペースの共有化が進み、人々が勤務時間の半分をホームオフィスやダイニングルームのテーブルで業務にあたるようになれば、10台必要だったデスクを半分に減らせるかもしれないという意味だ。
バークレイズによると、S&Pコンポジット1500インデックス(500ではなく1500)の企業のうち半数が、直近の収支報告で在宅勤務について言及した。これらの企業の80%は在宅勤務がうまくいっていると述べており、「二度とやらない」という姿勢はとっていない。
バークレイズ・リサーチが英国の従業員たちを対象におこなった調査では、パンデミックが去ったあとも在宅勤務を望む従業員が半数以上にのぼった。ほかの調査でも、これと同様の結果が出ている。従業員の75%近くは在宅勤務の経験をポジティブにとらえており、約60%が、雇用者の許可があればパンデミック後も在宅勤務したいと答えた。
2つめの鍵となるエビデンスとして、パンデミックのさなかでもオフィスへの通勤を続けている米国の従業員に関しても、そのうちの70%は、昨年に比べて出勤日数が週に半日は減少している。
「フルタイムで在宅勤務していた従業員たちがオフィスに戻るにあたっては、彼らは、パンデミックのさなかにオフィスに行って勤務する必要があった人たちと比べて、さらに勤務時間が短くなると考えるのが自然だ」と、リポートの著者らは述べている。