ビジネス、反差別、コートの内外で存在感を増す大坂なおみ

Photo by Marek Janikowski/Icon Sport via Getty Images

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女子テニスの大坂なおみ(22歳)がその名を世に知らしめたのは、忘れがたい2018年の全米オープン。セリーナ・ウィリアムズを破って優勝したときだ。日本テニス界のエースである大坂はその後、無観客で開催された2020年の全米オープンを含む2つのグランドスラム(四大大会)をさらに制し、その実力を裏づけた。

コート上での輝かしい実績だけでなく、日本人の母と、ハイチ系米国人の父を持つその生い立ちが、大坂と契約したい企業を呼び寄せ、争奪戦が勃発。その結果、大坂は2019年6月から2020年5月までの1年間で3740万ドル(約40億円)を稼ぎ、女性アスリート最多を記録した。

大坂の過去のツアー優勝回数は6回で、そのうちの3回はグランドスラムだ。また、賞金額と観客の規模から「5番目のグランドスラム」と呼ばれるインディアンウェルズ・マスターズ(BNPパリバ・オープン)でも一度優勝している。

大坂は、多くの企業とエンドースメント契約を結んでおり、その数はスポーツ界全体でも突出した15社だ。五輪スポンサーでもあるP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)やANA(全日空)、日清などが大坂と契約して、2021年に延期された東京五輪の広告塔に採用している。

ナイキは、大坂にとってエンドースメント契約料が最も高額の企業だ。アディダスとの競合の末に契約を勝ち取り、2019年には1000万ドル以上を支払っている。ナイキは2020年第4四半期、大坂モデルのストリートウェアを日本で発売する予定で、フード付きスウェットやレギンス、Tシャツなどが店頭に並ぶことになる。

大坂は2020年、「最も稼ぐ女子スポーツ選手ランキング」で1位を独走していたセリーナ・ウィリアムズの連覇を4年で終わらせた。プロテニスのトップ選手は、試合で獲得する賞金よりも、コート外からの収入のほうがはるかに多い。スポンサーが、裕福な人の多いテニスファンたちをターゲットにしているからだ。

大坂は、2019年1月にWTA(女子テニス協会)ランキングで1位に輝き、男女を問わず、アジア出身の選手として初めて世界トップに上り詰めた。

大坂なおみ、WTAランキングの推移


2012年 1016位
2013年 403位
2014年 238位
2015年 143位
2016年 40位
2017年 44位
2018年 4位
2019年 1位
2020年 3位

大坂は、公の場で発言する機会が増えたことを利用し、人種間の平等に目を向けるよう呼びかけている。そもそもの発端は、2020年8月に米ウィスコンシン州で黒人男性ジェイコブ・ブレイクが警察に撃たれたことに抗議する意味で、事件直後に出場したツアー大会「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」の試合を棄権したことだった。その後、主催者側も大坂に賛同し、全試合を1日延期している。

また、2020年全米オープンで大坂が着用したマスクにより、警察に殺害された黒人への関心が高まった。彼女がつけたマスクには、警察に殺害された黒人のジョージ・フロイドやトレイヴォン・マーティン、ブリオナ・テイラーらの名前が書かれていた。

大坂は全米オープンでの優勝後、次のようにツイートしている。「『スポーツに政治を持ち込むな』と私に言ってきたすべての人は、勝とうという私の気持ちを強くしてくれた(そもそもこの問題は、政治的なものではまったくない)。私はできるだけ長くテレビに映るつもりだから、そのつもりでいて」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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