・世界の水供給は、人口増大の圧力にさらされています。
・そんな中、農業が違法な取水の主な原因となっています。
・さらに、気候変動が世界全体の水危機を悪化させています。
新しい研究によると、世界の水供給量の半分が盗まれており、その主な原因は農業であることがわかっています。
科学ジャーナル「ネイチャー・サステイナビリティー」に掲載された国際的な研究チームによる論文に、地球の水供給量の30~50%が毎年盗まれていることが報告されています。しかし、法的および政治的枠組みを見直すことで、貴重な水の供給を守ることは可能である、とも述べられています。
盗水は、代金を支払わずに処理済みの飲料水を使用したり、環境ガイドラインに違反する形で自然水源から取水したりするなど、さまざまな形で発生しています。多くの場合、これは世界の水使用量の70%を占める農業に起因しています。社会的態度や将来の水供給に対する不安が、盗水犯罪を助長していることが同論文で明らかになりました。
盗水の背景
盗水犯罪は豊かな国で起きていますが、そのような行為に及ぶのは開発途上国に住む貧しい人々や弱者であることが多いと先の論文は指摘しています。データ不足もあり、この問題は十分な研究がなされていませんでした。
そこで、アデレード大学が率いる研究チームは、この問題の研究に役立つ新たなフレームワークとモデルを開発し、カリフォルニア州のマリファナ栽培、スペインのイチゴ栽培、オーストラリアの綿花栽培における盗水犯罪の3事例に適用しました。スペインの事例では、渡り鳥のために保護されている地域で水が盗まれていました。
同研究では、盗水に対する罰則の強化の必要性が強調されているものの、人々が水の規制を理解し、規則に従うことを当然と考えている地域では、盗水の事例がはるかに少ない点も指摘されています。
「水危機は人類に対する挑戦である」として、状況の緊急性を認識するよう当局に求めており、「規制当局が水の価値を理解していない場合、不適切な罰則規定が盗水犯罪のリスクを高める」と報告しています。
さらに、監視技術の向上がこの問題に取り組む上で大きな役割を果たすだろうとも述べられています。
増大する「水ストレス」
世界の水資源は、これまで以上に逼迫しています。20世紀には世界の人口が3倍に増加し、生活水準の上昇によって需要がさらに拡大しています。さらには、気候変動が地球全体の水ストレスの問題を加速させているのです。
国連水関連機関調整委員会は、世界にとって、水は気候変動の影響を感じ取れる主要な媒体であると述べ、洪水と干ばつが共に増加していることが、水の利用可能性を予測不可能なものとしていると伝えます。
20億人以上の人々が、高いレベルの水ストレスにさらされた国で暮らしており、2040年までに世界の子どもたちの4分の1が極度の水ストレスにさらされた地域で生活することになるでしょう。2030年までに最大7億人もの人々が、水不足によって住まいの立ち退きを余儀なくされると国連は予測しています。
世界水会議がまとめたデータによると、世界の水使用量のうち、家庭における消費は全体の10%に過ぎず、産業による使用は20%、貯水池からの蒸発量は4%となっています。残りは農業による使用で占められています。
世界経済フォーラムの「世界水イニシアティブ」は、2030年までに世界の水の需要と供給のギャップが40%に拡大するという科学者の警告を背景に発足しました。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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