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テスラのCEOであるイーロン・マスク(Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images)

イーロン・マスクは、テスラのEV業界リーダーとしての地位をさらに確固たるものにしようとしている。同社は、従来に比べて大型で、56%も低コストなリチウムイオン電池を開発し、量産化することで競争優位性を強化したい考えだ。

しかし、実現にはあと数年を要する見込みで、生産システムも準備が整っていない。

マスクは、数カ月前からバッテリー技術を発表するイベント「Battery Day(バッテリーデー)」の実施を宣伝してきた。カリフォルニア州パロアルトにあるテスラ本社の駐車場で開催されたこのイベントで、テスラは独自開発した「4680」セルの新型バッテリーを発表した。

マスクとDrew Baglino(パワートレインとエネルギーエンジニアリング担当のシニア・バイスプレジデント)によると、4680セルは、現行の「2170」セルに比べて大きさは2倍以上、エネルギーは5倍、航続距離は16%増、パワーは6倍だという。

テスラは、シリコンバレーにある施設で新型バッテリーの試験生産を開始しているが、マスクが目標とするテラワットアワー規模の生産能力を達成するのにはしばらく時間を要する見込みだ。「試験生産の生産能力を10ギガワットアワーまで高めるのに1年を要するだろう。本生産に入ったら、200ギガワットアワーかそれ以上の生産能力が必要になる」とマスクは述べている。

マスクは、4680セルの生産システムには、まだ不備があることを明らかにしている。「生産システムは機能する状態に近づいているが、まだ試験生産水準には至っていない」とマスクは話す。

マスクは以前、バッテリーデーが“insane(常軌を逸した)”な内容になると豪語していたが、開催前日の9月21日になって、「2022年まで大量生産は実現しない」とツイートしていた。

テスラが新型バッテリーを量産できるようになっても、パナソニックやLG化学、中国のCATL(寧徳時代新能源科技股)などのサプライヤーから引き続き2170セルを仕入れることになる。

決算発表会はドライブインシアター方式


新型バッテリーの生産能力を高めるため、テスラはカソード(陰極)素材を生産する工場を建設すると同時に、陽極に使っていたグラファイトを、より低コストなシリコンに変更する予定だ。同社はまた、ネバダ州にある1万エーカーのリチウム鉱山の権益を取得した。マスクは、詳細な場所や支払った金額については明らかにしていない。

バッテリーデーと同日に、テスラの年次株主総会も開催された。今年は新型コロナウイルス対策としてドライブインシアター形式で行われ、参加者はテスラ車に乗ったまま、歓声の代わりにクラクションを鳴らした。

総会では、アクティビスト投資家が従業員の労働状況に関する情報開示と、バッテリーや他の部品に用いる原材料をエシカル(倫理的)に調達することを確約するよう求めた。テスラの取締役は、これらの提案に反対票を投じるよう株主に呼びかけ、否決される見通しだ。

イベントでは、新型バッテリーの詳細な説明がなされた一方で、量産化や生産システムの低コスト化に数年を要することが明らかになり、投資家を失望させた。9月22日に、テスラの株価は場中で5.6%値下がりし、アフターマーケットでは約7%下落して394.98ドルとなった。

バッテリーデーの参加者は、最近のテスラのイベントと同様に、テスラファンが大半を占めていた。最後に行われたQ&Aセッションでは、エクイティアナリストやジャーナリストから1つも質問は出なかった。

編集=上田裕資

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