キャリア・教育

2015.04.26 12:34

デザイン思考のメソッドをプログラムに取り入れた学校ISAK

一期生入学前に行われた、IDEO Tokyoのスタッフと教職員によるワークショップ。「どうしたらISAKを、強い連帯感を感じられる場所にできるか?」をテーマに話し合う。

一期生入学前に行われた、IDEO Tokyoのスタッフと教職員によるワークショップ。「どうしたらISAKを、強い連帯感を感じられる場所にできるか?」をテーマに話し合う。



人々が困っていることや社会の課題を見抜くためには洞察と共感する力が必要だ。
子供たちのためにデザイン思考のメソッドをプログラムに取り入れた学校がある。
昨年開校した「インターナショナル・スクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」だ。


キーワードは「フィードバック・イズ・ギフト」。自分と異なる視点は大歓迎。意見こそ気づきを与えるための「贈り物」。フィードバックを与え合う関係が、コラボレーションとなって一体感を生み、可能性を一気に広げていく―。
昨年、軽井沢に開校した「インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)」は、半数の生徒に奨学金が給付され、世界から多様なバックグラウンドをもつ子供が集まる。開校前からIDEOのスタッフと教師たちがワークショップを開催。サマースクールに参加した子供たちもIDEOとのコラボレーションを行い、“マインドセット”の重要性を浸透させていった。
「日々、デザイン思考を体得していることが、生活から学習までさまざまな場面で変化となって表れたのです」と驚きを隠さないのは、同校の桑田佳与子・広報マーケティングディレクターだ。
まず、「子供たちは与えられた問題を解くのではなく、本当の問題は何かを貪欲に探しにいくようになりました」と言う。例えば、地元における「奉仕活動」でのこと。はじめの頃、生徒たちは自然保護活動を行うNPOで、リサーチなどの課題をもらってお手伝いをしていた。しかし、次第に生徒たちはこの団体に「ニーズ」を聞きに行くようになった。その結果見出した課題が、「減少している観光客を増やすため、外国人観光客にNPOのネイチャーツアーを知ってもらうこと」だった。「しかし、大人は興味があっても、子供は関心がないかもしれない。そこで親がツアーに参加中、生徒が子供を預かり、大自然の中でISAKが行っているリーダーシップ学習を教えようと提案しています。また、SNSや外国人向けに英語のチラシをつくり、そこにQRコードをつけて、iPhoneでツアーの動画を見られるよう提案しています」(桑田) ここで生徒たちが得たのは、「ひとりですごいアイデアを思いつく必要はなく、みんなでアイデアを出し合い、さまざまな視点から肉づけしていく」という発想だ。それには価値観が異なる仲間達を集めることが大切と気づいていく。

「フィードバック」の大切さ 生活のちょっとしたことにも、この精神は生きていく。寮の共有スペースであるミニキッチンを誰かが散らかしっぱなしにすることがあった。誰が片づけないのか「犯人捜し」をしても解決に至らないと気づくと、「みんなが気持ちよく使うにはどうしたらいいか」と発想を切り替えた。ISAKの生徒たちは、世界中の様々な地域出身のため、片付けの習慣も、常識も異なる。彼らは「お互い違う」ことを受け入れた上、試行錯誤しながらアイデアを形にしていった。こうしたプロセスの中で、生徒たちが体得したのが、フィードバックの大切さだ。例えば、テスト。生徒は教師に点数よりもコメントを求めるようになった。次に向けた改善になるからだ。どんなことでも先生や仲間にフィードバックを求める習慣は、次のようなチームワークを生んだ。
オペラが好きな日本人の男子生徒がいた。独学で練習する彼に、教師が「コンテストに出てみたら?」と声をかけた。本選前夜、彼は食堂で仲間たちに「僕の歌を聞いて、感想を聞かせて欲しい」と言う。クラス全員が彼の歌を聴いた後、10 人ほどの生徒が手を挙げ、「歌の最後の方に感情をこめたほうがいい」など厳しい意見を言いながら、練習につきあった。結局、彼は惜しくも入賞を逃した。だが、「仲間からのサポートがうれしかったから、次に向けて頑張る」と言う。「生徒は、仲間の成功を助けることが、チームの成功にもつながると信じています。困難も失敗も『挫折』ではなく『機会』だととらえ、果敢に挑戦を続けています」(桑田)

 評価を恐れず、積極的に発言することで違う視点が得られる。それが最終的には、チームとしての成果になる。大人こそ学ぶべき点なのかもしれない。

フォーブス ジャパン編集部 = 文

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