ライフスタイル

2020.09.20 08:00

「ワーケーション」の誤解を解く 実は企業にメリットも


柔軟な働き方の選択肢として、導入の検討を


政府や地方自治体が活発に議論をしたとしても、企業側はあまりメリットを見いだせていないようだ。成果主義の欧米では、場所や時間に関係なく仕事のアウトプットを重視するので自由な働き方は受け入れられやすい。しかし、コロナ禍にリモートワークが盛んになったとはいえ日本では、「会社にきてこそ仕事だ」「タスクのチェックは誰がするのか」「労働時間の管理はどうするのか」など組織文化が大きな壁になっていると、田中教授は指摘する。

また、旅行先までの移動中の事故は労務災害に含めるのかなど、制度的にグレーゾーンであることも、ワーケーションのような働き方を積極的に認められない一因だ。

「例えば、副業もはじめは一律で禁止としている企業が多かったですよね。でも本来は、勤務時間外の活動を会社が制限するものではないはず。それを政府などがモデル就業規則に盛り込み、働き方改革として積極的に推奨することで副業を認める会社が少しずつ増えてきました。このように、モデルとなるようなワーケーション制度の枠組みを提示することで(企業側も)制度を整備できるような環境づくりが必要です」

では、デジタルノマドのような働き方が難しい企業で働くサラリーマンにとって、ワーケーションは縁遠いものなのだろうか。田中教授は、このような仕事と休暇を掛け合わせるスタイルが向いているタイプの人とそうでない人がいるという。

「今の20代などは、仕事とプライベートは完全に分けたいと考える人も多いですが、そういう人には向いていないのかもしれません。自由に裁量が与えられると生き生きする人やマルチタスクの得意な人は、このような働き方が向いているといえますね。また、接客業や医療職など、対面でサービスを提供する職種はこのような働き方はもちろんできません。しかし、全ての人に当てはまらないからといって整備できない制度ではないはず。会社として認めることで休暇を取りやすい雰囲気を作ることが大切です」

ワークとライフだけでなく、ソーシャルの機会も提供


一部の企業では、地方自治体とプロジェクトを組み、ワーケーションと併用して、実際に地域の課題解決ボランティアに携わるプロジェクトなども進められている。

例えば、外資系消費財メーカーのユニリーバでは、「地域 de WAA」という制度を社内で立ち上げ、地域課題の解決を同社の社員と一緒に解決していくことを希望する地域の自治体と提携している。社員は、希望する地域を訪れコワーキングスペースを無料で利用してリモートワークをしたり、実際に自治体の課題解決に貢献する活動を行うことで提携する宿泊費が無料または割引されるといった工夫も。
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文=田中舞子 編集=督あかり

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