ベイリー・ギフォードはウェイフェアの大株主であり、ウェイフェア株は新型コロナウイルスの感染拡大で当初は下落したものの、その後8倍に上昇した。自主隔離中の顧客が自宅の修繕に勤しむようになり、売り上げが急増したためだ。
また、同社はフードデリバリーの「グラブハブ」や、外出制限中に増えた体重を落とすために多くの人が利用するフィットネスバイクの「ペロトン」など、急騰中のコロナ株の最大株主でもある。
ベイリー・ギフォードが20年に投資家にもたらしているリターンは、奇跡的としか言いようがない。資産額100億ドルの主力ファンドでアンダーソンが共同運用する「スコティッシュ・モーゲージ・インベストメント・トラスト(SMT)」と、400億ドルの資産を有するより新しい「世界長期成長株ファンド」は、年初来約20%高となりS&P500を30ポイント上回っている。しかも、どちらもこの5年間は同様の年間平均リターンを記録しており、これはS&P500の倍以上に当たるのだ。
また、同社のより新しい種類のファンドは、米国企業やファンド名にもなっている「ポジティブ・チェンジ」を促進する企業の銘柄を中心に構成され、リターンも好調で、最大25%上昇している。リターンが下がっているファンドですら、それぞれのベンチマーク指数を完全に上回っている。
ポイントは研究とテクノロジーへの投資
未公開株式(PE)投資会社や企業のトップは、この10年間を企業のスリム化と借り入れによる資金調達に費やしてきたが、ベイリー・ギフォードの“ストックピッカー(銘柄選定の専門家)”たちはそうした取り組みをすべて無視し、研究とテクノロジーに投資する企業を求めてきた。
特に好むのは、直近の収益性は高くなくても、10年後には経済の推進役になれるかもしれない事業だ。数学的テクニックを駆使したクオンツ投資が大流行するなか、このスコットランドの投資会社は真逆を行っているわけだ。取引はほとんどせず、研究予算にしても文学賞や新しい哲学思想の検証、大学の遺伝学や計算生物学に関する寄付講座などに費やしている。
エディンバラの「オールドタウン」から少し歩いたところにある18世紀に建設された「ニュータウン」に本社を置くベイリー・ギフォードは、その好成績を運と片付けるには大き過ぎるし、古過ぎる企業だ。同社は1907年恐慌直後の08年に、オーガスタス・ベイリー大佐と事務弁護士のカーライル・ギフォードによって創業された。
ベイリー大佐は第二次ボーア戦争で名を成した人物だ。一方でパートナーのギフォードは、後に英国が第二次世界大戦に参戦した際、政府保有の大量の海外資産を主に米国人投資家に売却し、資金調達を助けたという。