経済・社会

2020.08.30 08:00

なぜ起こる? 国際的な調査で明らかになった漁業の腐敗の実態


事例から共通して見えてくるのは、腐敗は決して一様ではなく、その形態もさまざまなら、腐敗が起こる時期や場所も1つではないということです。腐敗の問題は、認証制度、アクセス協定の交渉、法執行機関による見逃し、ゆすり、政治的汚職、マネーロンダリングと脱税、人身売買など、あらゆる方法で見られます。

また、腐敗行為は南半球や開発途上国に限った話ではありません。認証制度、アクセス協定の交渉、マネーロンダリングと脱税といった腐敗は、富裕国でも貧困国でも発生しています。さらに、行為の範囲は地域や国のレベルを越え、国際的にも影響力を持っています。そのため、漁業における腐敗の問題をよく理解するには、慎重な分析が必要です。

新たな構造的アプローチを


漁業における腐敗の複雑さを考えると、得てして弱体化しがちな基本的な規制を超えた、より包括的な腐敗防止策を組み合わせる必要性が浮き彫りになってきます。実のところ、多くの国が腐敗の防止に関する国際連合条約(UNCAC)に署名し、ほぼすべての国がこの条約に反する漁業を法的に禁止しています。したがって、重要なのは法律や条約を増やすことではなく、問題をよりよく理解し、定めた内容をしっかりと執行していくことなのです。

しかし、犯罪との戦いや法執行の強化のみ取り組んでいては、他のやり方や政策の活用を検討する機会を逃してしまいます。例えば、認証制度の取り決めについて公開し、漁獲情報を政府のオンラインポータルで見られるようにすることは、透明性と説明責任を強化する重要な手段です。魚の出どころの追跡はバイヤーにとって、そして究極的には消費者にとっても重要なこと。役人の多くは、給与も低く、職務を遂行するためのリソースも十分に与えられていません。各地域で賄賂を受け取っている者が、同じく腐敗に手を染めている上層部が罰せられていないのを目の当たりにすれば、不公平感が高まり、士気が低下します。

構造的なアプローチを取らない限り、漁業における腐敗行為が蔓延し、複雑なまま定着する状態が続きます。それは、海の資源や生態系、漁業従事者の生計に関する持続可能な開発目標(SDGs)の実現への障害といつまでもなり続けることを意味します。効果的な取り組みがなされなければ、その影響はすでにある乱獲、また気候変動や海洋酸性化のような環境リスクなど、他の課題と合わさり、さらに増幅しかねません。

世界中の政策立案者がこの課題を認識するようになってきている中で、現象をより明確に理解し、実情に合った意義ある政策手段の包括的な組み合わせを考案すべく、より努力すべき時が来ています。この手段は、表面的なものではなく、文化、社会、国に定着してしまっている腐敗の根本的な原因を断つものでなければなりません。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Yifei Yan, LSE Fellow in Social Policy, London School of Economics; Adam Graycar, Professor in Public Policy, University of Adelaide

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