経済・社会

2020.09.18 16:30

過去の日常に戻らない。バルセロナ市「コロナ後の社会実験」

バルセロナ都市生態学庁ディレクター、ジョゼップ・ボイガス氏


パンデミック後に誕生した社会実験プロジェクト


鷲尾:バルセロナは、市民中心の民主的な都市のあり方を常に問いかけてきた街です。
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ジョゼップ・ボイガス氏:これまで多くの都市では、都市の「ハード」ばかりに投資をしてきましたが、その中に生活する人間のための「住み家」についてはあまり重視してきませんでした。しかし今後は、人の生活に一番身近な「住み家」を充実させることで、都市と人間との垣根が取り払われ、人間中心の都市づくりを進めていくことが重要になっていくでしょう。例えば、玉ねぎに例えると、その中心にあるのが人間であり、その次に、住み家、地域、都市、社会と何重にもつながりながら外側へ続いていくようなイメージです。

物理的距離は変わると思いますが、精神的距離、社会的な距離の重要性はそれ程変わらないと思います。

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「Mil casas en tu casa 」(「1000 Houses In Your Home」)プロジェクト (c) Sixto Nieto
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「Mil casas en tu casa 」(「1000 Houses In Your Home」)プロジェクトは、パンデミック後に生まれたひとつの社会実験のプロジェクトです。自主隔離の間、孤立するのではなく自宅でも都市の日常を体験しようという取り組みで、物理的には距離を置くけれど、人と人の精神的な距離は縮めようという新しい社会実験です。

今、こうした新しい実験的な取り組みが生まれているところです。

全てが有機的に調和することで、人間を中心としたひとつのコミュニティが存在する。そのような都市のエコシステム(生態系)を今後もバルセロナ市は目指していくことに変わりありません。


※『CITY BY ALL ~ 生きる場所をともにつくる』(博報堂生活総合研究所「生活圏2050プロジェクト」刊)より

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「CITY BY ALL」レポート

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ジョゼップ・ボイガス氏(Josep Bohigas)◎バルセロナ市都市生態学庁ディレクター。1991年から2015年までBOPBAA建築スタジオの共同ディレクターを務め、ティッセン美術館(マドリード)、エル・モリーノ劇場(バルセロナ)などのプロジェクトにより、FAD賞、バルセロナ市賞をはじめ建築・デザインに関する受賞歴多数。2016年1月からバルセロナ地域都市計画局の責任者を務めた後、2019年12月からバルセロナ市都市生態学庁ディレクターを務める。

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鷲尾和彦◎博報堂生活総合研究所「生活圏2050」プロジェクトリーダー。戦略コンサルティング、クリエイティブ・ディレクション、新規事業開発など幅広い専門性を通して、地方自治体や産業界とのプロジェクトに数多く従事。主な著書に『共感ブランディング』(講談社)、『アルスエレクトロニカの挑戦』(学芸出版社)等。

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