そう語るのは、東京大学経済学部教授の山口慎太郎氏だ。山口氏は、家族の経済学と労働経済学が専門で、著書『「家族の幸せ」の経済学 : データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』は、サントリー学芸賞受賞、週刊ダイヤモンドベスト経済書第1位を獲得している。
早生まれの子は本当に「不利」なのか?
また山口氏は、早生まれ、遅生まれ問題について研究しており、先日その結果を発表した。その豊富なデータから、早生まれが持つ傾向を知り、早生まれの子は本当に不利なのか、また親として何ができるのかを考える。
認知能力と非認知能力 異なる傾向が明らかに
上記のグラフは、年齢別の認知能力を示している。これを見ると、年齢が上がるにつれて認知能力は上昇している。また、同じ学年内でも早生まれの子どもの認知能力は低く出ているが、学年が上がるにつれて月齢における差違は縮小している。こうした結果は一般的にも広く認知されているが、驚くのは次の結果だ。
このグラフでは、年齢別の非認知能力を示している。思春期には、最近注目されている、目標に向かって頑張ることができる、人とうまく協力できる、感情をコントロールできる、失敗から学べる、違う価値観を柔軟に受け止められる、新しい発想ができるといった「非認知能力」が下がることが一般的だが、学年内では相対的に遅生まれの子どもの方が高い非認知能力を有している。そして、相対的な月齢による差は学年が上がっても縮まらない。
高校入試にも━━偏差値4.5の差
早生まれ、遅生まれの差は、高校入試にもあらわれている。3月生まれと4月生まれで入学した高校の偏差値を比べると、4.5も差がある。
こうした背景には一体何があるのか。山口氏らは、子どもたちの学校外での活動や人間関係についても検証している。まず、上記のグラフでは、早生まれの子どもほど学校外での学習・読書時間が長く、通塾率も高くなっている。これらは認知能力の向上に寄与すると考えられる。