ここ10年のあいだに新聞を手にしたことがある人なら誰もが認めるように、「スーツ以外の服を着た女性政治家」には、ニュースのネタになる価値がある。政治家(つまり男性のこと)ならスーツを着るのが当然だ、というのがその理由だ。「政治家」は中立的・標準的なスーツを身に着けるものであり、ファッションを装うのは「女性」なのだ。
支援者が集まるイベントにはデニムとブラウンのジャケット姿で(Getty Images)
女性のファッションに難癖をつける「ファッション・ポリス」は、ひどいときには、女性の装いを、その影響力を失わせるために利用する。最も良い時でも、女性の装いを、その好感度の判断材料にする。そして今回、ハリスが副大統領候補になったことで、ファッション・ポリスたちが活動を始めるのは目に見えている。
もっともハリスは、社会の期待通りにふるまうことはできる。大統領の座を目前に敗退したヒラリー・クリントンは、2000年にニューヨーク州上院議員選挙で勝利した際に、当選したのは黒のパンツスーツのおかげだと冗談半分に語ったが、それに習えばいいのだ。そしてハリスがその方向性をとるだろうことは、ほぼ間違いない。その際には、「普通の人たちが着る服」がポイントになるだろう。
ネイビーのパンツスーツ姿でテレビ出演したハリス(左、Getty Images)
ハリスはもう何年も前から、「きわめてアメリカン」で「きわめてジェンダーニュートラル」なスタイルをほぼ貫いてきた。ブランドものや、流行りのファッションではなく、ジーンズやTシャツ、コンバースのシューズを好んで身に着けてきた。
伝統的な政治家らしいスタイルではないが、そうだとしても、ごく普通の米国人が親しみを感じる服装であるのは確かだ。清潔感があって、堅実だし、少なくとも今のところは、メディアにほとんど注目されていない。
Getty Images
ハリスは、銃暴力について考えるフォーラムに出席したり、プライド・パレードやデモ行進に参加したりするとき、「普通の店で買った普通の服」をつねに身に着けている。外見に注目されるより、自分の政策や考えがニュースで取り上げられるように仕向けているのだ。
白いパンツスーツは女性参政権運動の象徴になり、「メッセージが書かれたバッジ」は無言の抗議活動の象徴になった。それと同様に、ハリスはコンバースを、抑圧されてもうまく立ち回る姿勢を象徴するものにするかもしれない。