ウーバーが先ごろ発表した2020年第2四半期(4~6月)の決算によれば、同期の予約数はライドシェアなど移動サービス部門が前年同期比で73%減少。一方、料理の配達サービス部門では2倍以上に増加した。売上高は配達サービスがおよそ2倍の約12億ドル(約1270億円)、移動サービスは約65%減の約7億9000万ドルだった。
予約数でも売上高でも、配達サービス部門が初めて移動サービス部門を上回ったことは、わずか4年前に立ち上げられたウーバーイーツの事業を、パンデミックが大きく後押ししていることを示している。
「ステイホーム」を求められる消費者からの注文が増加するなか、ウーバーはスターバックスやマクドナルドをはじめとする飲食店のドリンクや食事から、食料品店や薬局を含むその他の店舗が扱う商品まで、配達を請け負う対象の幅を広げることに力を入れている。
それを示すいい例といえるのが、ウーバーが7月、料理の宅配で競合する米ポストメイツ(Postmates)の買収で同社と合意したことだ。ポストメイツはロサンゼルスやラスベガスなどの市場ですでに足場を築いており、中小規模の飲食店の多くとも契約していることが魅力だったと考えられる。
ウーバーはポストメイツとの合意を発表する以前、料理配達サービスのグラブハブ(Grubhub)の買収に向けて交渉を続けていた。だが、 独占禁止法に違反する懸念があることや、買収価格などを理由に断念。その後、グラブハブは欧州のジャストイート・テイクアウェイ(Just Eat Takeaway)が73億ドルで買収することになったと発表されている。
ウーバーとグラブハブが合併すれば、米国最大の料理配達サービス事業者となり、現在の最大手であるドアダッシュ(DoorDash)を超えるとみられていた。
米調査会社セカンドメジャー(Second Measure)によると、米国の6月の料理配達サービスの売上高に占めるシェアは、ドアダッシュが45%。ウーバーイーツは24%、グラブハブは22%だった。ポストメイツは8%となっている。
ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は、「新型コロナウイルス(のパンデミック)は料理の配達をぜいたくから実用的なものに変えた」と発言。さらなる需要の増加が見込めること、競争が激化していることなどに着目している。
ウーバーはチリを拠点とする食料品デリバリーの新興企業コーナーショップ(Cornershop)との提携により、6月から中南米とカナダ、米国の一部の都市で食料品の配達を開始。また、配車サービスのうち「ウーバーX」に分類される車のドライバーが個人間での小包の配達を請け負うウーバーコネクト(Uber Connect)のサービスを、170以上の都市で提供し始めている。
ウーバーの移動サービス部門は需要の落ち込みにもかかわらず、第2四半期は黒字を維持。一方で配達サービス部門は2億3200万ドルの赤字を計上している。それでもコスロシャヒCEOは、フランスやベルギーなどの国ではウーバーイーツが黒字に転換していることを指摘。「配送を専業とする企業でも利益を出せる可能性はある」との見方を示している。ウーバーの配達事業は数年のうちに、“圧倒的多数”の国で利益を上げるようになると考えている。