ネットフリックスは今年6月、ナサールの事件を題材としたドキュメンタリー「あるアスリートの告発(原題:Athlete A)」の配信を開始したが、この作品をきっかけに女性選手への暴行が再び世間の関心を集めている。
オーストラリアの元体操選手たちは、SNS上で過去の体験を振り返り、アスリートたちが肉体をけなされたり、暴言を浴びせられなどの有害なカルチャーの支配下に置かれていることを告発した。
オーストラリア体操連盟は30日、人権委員会が調査を開始し、2021年までに報告書を作成するとアナウンスした。その数日前には、「あるアスリートの告発」を観たオランダの元体操選手らが、同様な告発を行ったことをきっかけに、オランダの体操連盟が女性選手の育成プログラムの休止を決定していた。
英国の体操連盟も7月初旬に同様な調査を開始している。オリンピックで合計4個のメダルを獲得した英国の体操選手のルイス・スミスは、体操連盟が選手の訴えを無視してきたと批判した。
今年3月には米国の女性体操選手のシモーネ・バイルズらが、ナサールの事件の被害者らに、2億1500万ドルの和解金支払いが提案されたことを批判した。和解金を受け取る場合、被害者らは、米国オリンピック委員会や体操連盟、コーチを相手取った訴訟を起こせなくなる。
「ネットフリックスのドキュメンタリー作品が配信されて以来、心の奥底に埋めこんでいた過去の辛い記憶が、再び湧き上がってきた」と、2008年の夏季オリンピックに出場したオーストラリアの女子体操選手、オリビア・ビビアンはインスタグラムに投稿した。彼女はその後、自らの体験を告白した。
「あるアスリートの告発」に登場するラリー・ナサールは、治療と称して156人の少女らを性的に虐待し、最高175年の禁固刑を宣告された。ミシガンの裁判所のローズマリエ・アクイリナ裁判官はナサールに判決を言い渡す際に、「あなたが犯した罪は、死ぬまで刑務所の中に閉じ込めておかれるべきものだ」と宣言した。