ビジネス

2020.08.01

逆境のファーウェイが「世界のスマホ市場トップ」の理由

Photo by Costfoto/Barcroft Media via Getty Images

四半期ベースのスマホ出荷台数で、中国のファーウェイがトップに立ち、2年振りにサムスンが首位から陥落した。調査会社カナリスは、2020年第2四半期の出荷台数でファーウェイが5580万台と、サムスンの5370万台を上回ったと発表した。サムスンとアップル以外の企業がトップに立つのは9年ぶりという。

3位はアップルだった。正確な出荷台数は集計中というが、4000〜4500万台だった模様だ。4位はシャオミで2880万台、5位はOPPOで2580万台だった。

ファーウェイは、2019年5月にトランプ政権によってエンティティリスト(制裁対象リスト)に登録された。これによりグーグルのアプリやサービスが使用できなくなり、ファーウェイのモバイル事業は大きな打撃を受けた。

それにもかかわらず、出荷台数で世界首位になったことは、同社にとって大きな勝利だと言える。ファーウェイは、第1四半期に4900万台のスマホを出荷しており、上半期でも世界の首位となった。

数字を詳しく見ると、興味深い事実が見えてくる。筆者は当初、新型コロナウイルスの感染拡大が今回の結果に大きく影響していると考えた。ファーウェイの主要市場である中国では多くの人が普通の生活を取り戻しているのに対し、サムスンの主要市場である北米はまだ回復途上にあるからだ。

そこで、筆者はカナリスのアナリストでパリ在住のMo Jiaに詳細を聞いてみた。

Moによると、ファーウェイの第2四半期の実績の5580万台のうち、4000万台が中国国内で販売されたものだという。「中国が欧米諸国よりも早く通常の生活を取り戻していることは、ファーウェイの実績に大きく貢献している。だが、それだけではない。同社は大方の予想に反し、欧州で大幅な販売減を防ぐことに成功した」とMoは述べた。

ファーウェイの欧州市場におけるシェアは、昨年の第2四半期が22%だったが、今年の同期は16%と大きく減少した。しかし、Moはパンデミックの影響やグーグルとの取引停止を考慮すると、減少幅は比較的小さいと指摘する。

ファーウェイは、P30など、グーグルのアプリやサービスが使用できる旧モデルを再リリースすることで、欧州でのシェア減少を最小限に食い止めている。

今後の成長のカギとなるHMSの推進


「ファーウェイは、既存機種の新色やパーツを欧州で再リリースしており、売れ行きは好調だ」とMoは指摘した。グーグルのサービスが搭載されていない新機種については、グーグル利用率が高い西ヨーロッパで苦戦しているが、ロシアやトルコなど、グーグル利用率が比較的低い地域においてはよく売れているという。

しかし、旧モデルに依存する戦略には限界がある。モバイルテクノロジーが急激に進化する中、新機種との性能の差が大きくなるからだ。

「中長期的に西ヨーロッパで売上を維持するためには、グーグルのサービスを置き換えるために開発したHMS(ファーウェイモバイルサービス)のユーザー数を増やす必要がある」とMoは指摘する。ファーウェイもこの点はよく理解しており、HMSの普及に努めている。

ファーウェイの欧州事業でモバイルアプリストア向けエコシステムとソフトウェアの戦略責任者を務めるAndreas Zimmerは筆者の取材に、「欧州におけるHMSのユーザー数は、2019年第1四半期の5.3億人から2020年第2四半期には7億人に増加した」と述べた。

ファーウェイは、10億ドルを拠出してアプリ開発者の育成・支援を行うプログラムを立ち上げるなど、独自のエコシステムの普及を推進している。

編集=上田裕資

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