金持ち優遇の米国司法制度の二重構造、コロナ禍で矛盾が激化

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金があれば、チャンスが手に入るだけでなく、貧しい人々と比べると途方もなく手厚い司法上の保護が受けられる。たとえ逮捕されたとしても、より手厚い扱いが受けられ、より有能な弁護士に依頼することができて、裁判官や陪審員の判断も自分に有利になり、金の力で保釈を手に入れることも可能だ。一方、低所得者を待ち受けているのは過酷な仕打ちだ。そうすることで、検察官や政治家などが「自分は犯罪を厳しく取り締まっている」というアピールができるからだ。

米国の刑事司法制度については、かねてから活動家や各種団体から問題視する声が上がっている。司法制度について提言を行っている非営利組織センテンシング・プロジェクト(Sentencing Project)は、2013年8月の報告書で次のように指摘している。

「米国には、実質的に、全く異なる2つの刑事司法制度が並存している。ひとつは経済的に豊かな人々のための制度、もうひとつは貧困層やマイノリティーのための制度だ。米国政府が報告書に記載するのは、前者の制度だ。この制度の中では、当事者主義(原告、被告が裁判を主導し、裁判官、陪審は中立の第三者として判断を示す裁判方式)がしっかりと機能しており、被告人には憲法に定められたさまざまな保護が与えられる。

しかし、被告人が貧困層やマイノリティーである場合、米国の刑事司法制度の中で受ける扱いは、前者のモデルとは大きく異なるケースが多い。これにはさまざまな要因が絡んでおり、その一つひとつが、現在の司法制度の中でこのような層が有罪判決を受け、収監される確率が高まる現象に拍車をかけている」

仮に有罪判決を受けた場合でも、金さえあれば、刑が減免される可能性がある。刑務所に入ることにとなったとしても、収監先は、家族と面会がしやすいように、家族の住む街から近い刑務所が選ばれるだろう。さらに、財力があれば、刑務所での暮らしも多少は過ごしやすくなるはずだ。

何より重要なのは、逮捕されて身柄を拘束された場合でも、金があれば、保釈が認められる確率が大幅に高まる点だ(保釈金不要で、自らの誓約だけの保釈が認められる可能性もある)。保釈されれば、来たるべき公判の日まで日常生活を送り、弁護の体制を整え、必要なリソースを利用することが可能になる。

当人の誓約だけでは保釈を許可できないというショッキングな判断を裁判官が示すかもしれないが、その場合も保釈金を用意すれば、有罪判決を受ける前の段階で一時的に自由の身となれる。しかもこの保釈金は(指定の額を払うだけの金銭的余裕がある場合に限られるが)、定められた期日に出廷すれば、少額の手数料は差し引かれるものの、ほぼ全額が返却される。

保釈中も仕事は続けられる。家族や友人と時間を過ごすこともできる。さらには、裁判での弁護について作戦を練ることも可能だ。念入りに準備ができれば、「当事者主義」を掲げる米国の司法の場で、最終的に勝利をつかむ可能性が高まる。まるでボクシングリングのような法廷での戦いで目標とされるのは、真実の追求ではなく、勝つことだ。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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