金持ち優遇の米国司法制度の二重構造、コロナ禍で矛盾が激化

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一方、金銭的余裕がない場合は、残念だが希望は持てない。家族が(住宅を担保に借金をするなどして)金を工面してくれない限り、小さな留置場で、裁判の日を待つことになる。

現在のようなパンデミックの最中にこのような留置場に置かれるとしたら、それは死刑判決と同じになる可能性がある。死や重症化の危険と隣り合わせだからだ。

先ごろも、メリーランド州で被疑者を裁判の期日まで留置するプリンス・ジョージズ郡立刑務所における感染拡大の事例が、公選弁護人たちによって報告された。そしてその状況について、ブルックリン在住の公選弁護人で、被告の権利を守る運動を行っているスコット・ヘキンジャー(Scott Hechinger)がツイッターで注意を喚起した。

同刑務所内の劣悪な状況は、身柄を拘束されている被疑者の宣誓陳述書に生々しく記されており、その内容を、俳優や歌手などの著名人が読み上げる動画が公開されている。実際の映像がないのは、刑務所内では携帯電話の使用が許可されておらず、内部の状況が記録できないからだ。

ある被疑者は、「私は死を覚悟してここに来たわけではない」と証言している。残念ながら、郡立刑務所がこのような劣悪な状況にあることを、この人は事前に知らされていなかったようだ。

まだ有罪判決を受けていない人に対して、人間らしい保護を与える義務を果たす意思がなく(そう、できないのではなく、意思がないのだ)、劣悪な衛生状態の監房に閉じ込めることに固執する社会とは、一体どういうものなのだろうか?

警察への予算拠出を打ち切るという提案はずいぶんと取りざたされているが、脱・収監、つまり金銭的余裕がないために身柄を拘束されている人たちの解放については、ほとんど話題にものぼらない。彼らは、ただ金がないがために、被疑者を丁重に扱いその立場に理解を示す刑事司法制度の恩恵を受けられない人たちだ。

プリンス・ジョージズ郡立刑務所の収監者たちの証言を読み上げた動画は、ウェブサイト「ギャスピング・フォー・ジャスティス(Gasping for Justice)」で視聴できる。しかもこれは、ほんの一例にすぎない。他の多くの刑務所などの矯正施設にも、この刑務所と同様の、無残で希望の持てない状況がある。はるか以前に改善されるべきだった状況が、いまだに続いているのだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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