AIが職業斡旋を民主化する時代 中小企業の負担減にも期待

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人工知能(AI)が職業を斡旋・マッチングしてくれる時代が間もなく本格的に訪れそうだ。

7月上旬、韓国省庁のひとつ雇用労働部と韓国雇用情報院が、「The Work AI」というサービスを、職業ポータルシステム「ワークネット」で稼働開始した。ワークネットは日本のハローワークのような位置づけで、中小企業の求人情報が多数掲載されている。移民や外国人労働者が仕事を探す際にも重宝されるサービスだ。

そのワークネット上で稼働することになったThe Work AIは、既存の求人検索のレベルにとどまらず、求職者の履歴書や求人企業の採用情報に記述された各種データを分析。両者にとって最適なマッチングを行ってくれるという触れ込みである。

まず求職者側は、ワークネットにログインし履歴書だけ登録すれば、自分の職務能力に見合った職場を自動で推薦してもらえる。一方、求人企業の人事担当者の作業も大幅に削減される。人事担当者が求人職種に関する簡単な職務内容を入力すると、AIがそれを自動分析。想定されているおよそ1万2000個の「職務能力」の中から、企業や職場に見合ったものを選び出し、「標準職務記述書」という求人説明文を作成してくれる。工数削減だけでなく、人事労務の専門性が高くない中小企業であっても、大手企業と等しいレベルで手軽に採用情報を作成できるようになるという点も、今回のシステム導入のメリットとされている。

なお、雇用労働部と韓国雇用情報院は、The Work AIが職業を斡旋する際に使用する、職務に関するキーワードのビッグデータを、民間にも公開していく予定だという。これは、学校での進路指導や、企業の雇用サービスの質を高めていくためだ。特に、これまで採用難にあった中小企業の採用力を高めつつ、最終的に求職者と企業の“ミスマッチ”を防ぐことが目標とされている。

少子高齢化で働き手の確保が難しくなっている日本においても、人材の斡旋、正確なマッチング、ミスマッチ防止は高い需要がある。事実、人材ビジネス業界の市場規模は、ここ数年、右肩あがりで拡大中である。しかし、派遣・斡旋企業が得る仲介・派遣料は決して安いものではない。中小企業は“恩恵”にあずかることは難しく、大企業にとっても人材獲得は大きなコストが前提となる。

人工知能による職業斡旋が求職者-企業にとって効果があると証明されれば、両者にとってメリットが大きいだろう。求職者に還元される賃金は増え、企業が採用に使える資金が増える可能性があるからだ。2020年に入り、日本においても、一部人材企業がAIを使ったマッチングサービスを提供開始しているが、今後、業界の勢力図を塗り替える革新的なサービスの登場に期待したい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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