政府のリーダーが明らかに不完全であっても、ロボットに取って代わる選択肢は、当面は合理的とも最適ともいえないでしょう。依然として人間は、少なくとも民主主義においては、自動化がもたらしうる影響から人間社会を守る最も正当な主体となります。
しかし、昨今のフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOの米上院での公聴会のような、目も当てられない失態を防ぐためには、政府のリーダーがデータやロボット工学の是非の検証、理解、管理してその役割を効果的に担っていくことが求められます。リーダーたちは、AIの倫理性や透明性、説明責任の規制や法律に関して、民間セクターに委ねるのではなく、より積極的に議論していくことも必要です。
リーダーが公正な意思決定を行うためのツールに
AIと自動化は、究極的には人間の競争相手でも代役でもなく、政府のリーダーがより公正で包括的な意思決定を行うために効果的に活用し、時に従うことができるツールであるというシナリオがより現実的であり理想的です。権威主義体制はすでにロボットを悪用してその真逆の決定を行っている、と指摘する人もいるでしょう。市民に対する先例のない調査、個人情報の公開、社会的信用の低下を目的として、政府がAIの活用範囲を広げていることが、そうした重大な問題の提起につながっています。
必要以上に詮索され、リスクの高い公的な決定を要する別の分野、すなわちスポーツ界において楽観視される傾向にあるかもしれませんが、これには理由があります。技術に頼った審判には、「許容すべき欠点」や「独裁者」といった主張による抵抗が長年続きました。しかし、2018年のFIFAワールドカップでは、ホークアイの技術でサポートされた審判補助システム(VARシステム)の導入により、テクノロジーと権限を分かち合い審判を下す場面を目の当たりにしました。
ワールドカップ決勝の対フランス戦で下された疑わしい判定の後では、同意できないクロアチアのサポーターもいるかもしれません。それでも、ファンの多くの反応は広く前向きなものになっています。これはまさに、人間の審判がよりよい判断を下すために電子審判がサポートしていることが理由です。結果的に、試合そのもの、審判、そして主要な関係者全員がVARシステムの恩恵を受けました。政府への高い信頼と市民参加の向上により、私たちが同様の事実を世界の政治や政策でも目の当たりにすることが実現することが願われます。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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