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サンフランシスコ本拠のフィンテック企業「パーソナル・キャピタル(Personal Capital)」は、個人向けに株や債券などへの投資を自動化する資産運用サービスを提供している。退職金運用サービスの「エンパワー・リタイアメント(Empower Retirement)」は先日、パーソナル・キャピタルを買収すると発表した。

エンパワー・リタイアメントはまず8億2500万ドル(約888億円)をパーソナル・キャピタルに支払い、2年間で目標の業績を達成できた場合はさらに1億7500万ドルを追加で支払う計画だ。PitchBookのデータによると、パーソナル・キャピタルの企業価値は2019年2月の資金調達時に9億5000万ドルとされていた。

パーソナル・キャピタルは元インテュイットCEOのビル・ハリスが2009年に設立した企業で、創業当初からの社員だったJay Shahが2017年からCEO職を引き継いでいる。

デンバー本拠のエンパワーは米国の退職金運用分野で、フィデリティ証券に次ぐ2位の企業だ。同社はカナダの生命保険大手のグレートウェスト社(Great-West Lifeco)の子会社で、運用資産額は6560億ドルに達している。

フォーブスは新型コロナウイルスが金融市場にダメージを与えた今年5月、パーソナル・キャピタルが買収ターゲットとなったことを察知していた。しかし、2011年からパーソナル・キャピタルに投資しているベンチャーキャピタルVenrockのBrian Ascherは、パンデミックは同社の価値を低下させなかったと述べている。

Ascherによると、エンパワーはパンデミックの前からパーソナル・キャピタルの買収交渉を進めてきたという。エンパワーの姉妹企業のIGM Financialは2016年にパーソナル・キャピタルに出資を行っていた。

パーソナル・キャピタルの顧客は、ロボアドバイザーとの会話を通じて、自動化された投資を行っている。この分野の競合としてはBettermentやWealthfrontらが知られている。エンパワーはパーソナル・キャピタルを傘下に収めることで、970万人の顧客のエンゲージメントを高め、新規の顧客を取り込みたい考えだ。

6月22日時点で、パーソナル・キャピタルは2万2661人の顧客を抱え、運用総額は122億ドルに達していた。同社は顧客たちから、預かり額に応じて0.49%〜0.89%の手数料を徴収している。同社の昨年の売上は7500万ドルから1億ドル程度だったと推定されている。

パーソナル・キャピタルは黒字化を達成していないが、Ascherによるとあと一歩で採算分岐点に到達する見通しという。「手元のキャッシュは十分にあり、売り急ぐ必要は無かった」とAscherは付け加えた。同社がこれまで調達した資金の総額は2億9000万ドルに達している。

顧客からの平均預かり額は競合の10倍以上


パーソナル・キャピタルの顧客数は昨年秋の時点で2万2200人とされており、顧客数の伸びはかなり緩やかだ。しかし、預り金の額はその後、約12億ドルも増えている。パーソナル・キャピタルの運用資産額は1年前との比較で約20%の伸びとなった。

競合のBettermentなどと比べると、パーソナル・キャピタルは年齢層の高い顧客から、より高いパーセンテージの手数料を徴収している。Bettermentの手数料は0.25%から0.4%のレンジで、1顧客からの預かり額の平均は3万4000ドルだ。これに対し、パーソナル・キャピタルの1顧客あたりの預かり額は53万8000ドルに達している。

Ascherによるとエンパワーは買収後のパーソナル・キャピタルに独自のオペレーションを委ねる計画という。「時間が経てばさらなる統合を進めるが、当面の間は、独立した企業体として存続させていく」と彼は続けた。

編集=上田裕資

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