センニャンゲ氏に日米のオープンイノベーションについて尋ねると、次のように話してくれた。
「日本企業は非常に公正であることがわかりました。他の国の企業とは異なり、交渉は常にパートナーシップの精神を維持し、お互いにとってより良い形にするために全力で挑むという素晴らしい姿勢があります。日本人との交渉は、繊細なバランスが重要で、礼儀正しさや“空気を読む”ことの大切さも学びました」
冒頭にも述べたように、シリコンバレーには世界に貢献するためにビジネスを展開するという類稀なカルチャーが存在する。センニャンゲ氏が話を続ける。
「日本企業は、シリコンバレーのスタートアップと協業することで、アメリカだけではなく、世界に製品をリリースできる可能性があります。オープンイノベーションをめざすには、Think Global(グローバルに考えること)が最重要です。コロナ禍が続いていますが、だからこそ、まだ誰もなし得てない海外の事業に投資をするなど、海外企業と協業に前向きになることが大切なのではないでしょうか」
Spirosure社は、2016年には中国最大の製薬会社の1社からシリーズCの資金調達も達成。シリコンバレーでさらにチームを拡大した。
主力製品である「Fenom Pro」は、呼気中の一酸化窒素(FeNO)濃度を測定して診断や管理指標に用いるための喘息測定デバイスで、初期診断および喘息状態の継続的なモニタリングを通して治療方針の決定にも役立っている。
2018年にはCEマーク(EUの安全性基準を満たす製品に与えられる)を取得、2019年にはFDA(アメリカ食品医薬品局)の認証を受け、主に欧米、最近ではインドで喘息患者の診断や治療に使用されている。使いやすさく、30秒未満で結果が得られると、米国呼吸器学会(ATS)や日本呼吸器学会(JRS)からも高い評価を得ている。
Spirosure社は、2020年6月3日、日本企業の子会社であるアメリカのCAIRE社に事業を売却し、無事イグジットを達成した。センニャンゲ氏がシリコンバレーで起業してから7年半のことであった。