ビジネス

2020.06.21

ドロップボックスCEOが語るコロナ時代の「テック企業の責任」

ドロップボックスCEO ドリュー・ハウストン(Matt Winkelmeyer/Getty Images for Dropbox)

ドロップボックス(Dropbox)のCEO、ドリュー・ハウストンは自宅からビデオ会議によるインタビューに応じてくれた。壁に立て掛けたギターを背景に、ハウストンは新型コロナウイルス対応について語った。

「我々はリモートワークへの劇的な転換を経験した」と彼は話す。ハウストンは、世界中のビジネスリーダーやテック企業の従業員らと同様に、ビデオ会議を使った仕事環境にすっかり慣れたと話した。

「気をつけないとビデオ会議漬けになって、10時間全く動いていないなんてことになりがちだ。会議に参加する間、PC上では様々なツールが点滅し、スラックには大量のメッセージが溜まっている。こうした状況を改善する余地は大いにあると思う」と彼は話す。

ハウストンは、2007年にアラシュ・フェルドーシと共同でドロップボックスを創業した。ドロップボックスは2年前に上場を果たし、現在の時価総額は90億ドル(約9600億円)に達する。新型コロナウイルスの感染拡大で世界中の人々が自宅勤務を余儀なくされる中、同社の取組みはこれまで以上に重要性を増している。

ドロップボックスでは、従業員がオフィスに戻るのは9月1日以降だという。現在、同社ではプロダクトを再考する必要性に迫られている。

「多くの顧客にとって、ドロップボックスは単なるデスクトップ上のフォルダではなく、あらゆる業務を行う場となっている。それは喜ぶべきことだが、問題はプロダクトをそのように設計していないことだ」とハウストンは言う。

「現在は分散業務の第1段階にある」とハウストンは言い、どこにいても業務ができる新たなワークスタイルに対応した機能を開発しているという。同社は既に、ゼロ知識証明(zero-knowledge proof)によるデバイス横断型のパスワード管理ツールや、遺書など秘匿性の高いデータに家族だけにアクセス権を付与できる「Vault」、自動的にPCのファイルをドロップボックス上にバックアップし、どの端末からもアクセスできるようにする機能、写真などのファイルを最大6人と共有できる有料プランをリリースしている。

ハウストンが目指すのは、ビジネスパーソンがチャットやビデオ会議の記録、テキスト、メールなどを掘り返して会議の内容や今後の予定を思い出す必要がないようにすることだ。

今の状況はこれからも続く


「今起きていることは、一時的な転換ではない。多くの人がオフィスに戻ることを楽しみにしている一方で、今後も自宅勤務を望んている人も大勢いる。こうした状況は今後も永続的に続くだろう。ワーキングライフにおいて、これほど大きくて唐突な転換は前例がない」とハウストンは話す。

こうした転換において、クラウド企業やテック企業が果たす役割は大きい。しかし、影響力が大きいからこそ、警察による顔認識技術の利用や、大統領の投稿に対するファクトチェックを巡るSNS企業の対応が物議を醸すように、テック業界には厳しい視線が注がれている。

「人々は、テック企業が我々の生活に多大な影響を及ぼしていることを理解している。世界にはリーダーが必要であり、テック業界は様々な問題の解決策を提案し、才能あふれる従業員たちの活用方法を考えることで貢献していくべきだ」とハウストンは話す。

ハウストンは、Black Lives Matter運動に50万ドルを寄付し、ドロップボックスの社員がBlack Lives Matterやその他の活動に寄付をする場合は、同額を会社が寄付するという。

「我々は、従業員が社会に関与し、ポジティブな影響を与えることを奨励している。ドロップボックスとテック業界全般が、全てのコミュニティにとって最も開かれた場所となることを望んでいる」と彼は語った。

編集=上田裕資

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