産業と政府の結び付き、グローバリゼーションの変化
危機の真っ只中にあっては、戦略的ビジョンと「新たな世界への準備」はCEOたちの関心事の中で最も優先順位の低いものでした。しかし、いまや一部の国はロックダウンの制限解除に向け慎重に歩みを進めており、危機後の未来に向けた準備はアジェンダのトップに位置しています。
ポストコロナの世界の姿について、アーサー・D・リトルのビジネスネットワークでは、不確実性に関する以下のような希望や意見の一致がみられました。
・政府は産業により深く関わるようになるでしょう。公益事業、旅行、医療などの重要なインフラ分野においてはそれが顕著になると考えられます。政府の関与が増すということは、規制も強化されることを意味します。
・多くの人がグローバルサプライチェーンの再ローカル化を求め、これまで、止められないほどの勢いで進んできたグローバリゼーションに対抗するようになるでしょう。国や大企業はより技術的な主権の獲得、他者への依存度の低減、世界規模のショックに対する事業のレジリエンス向上を目指すようになるでしょう。
・電子商取引、バーチャルネットワーキング、ロボット化などを含む、特に人との接触を減らせる事業活動を可能にする、デジタル技術の採用が大幅に加速すると考えられます。
しかし、これらの動向がどのように進んでいくかということについては、大きな不確実性があります。例えば、物理的な交流が激減する世界を人々は進んで受け入れることができるのでしょうか。さらなるデジタル化のため、データプライバシーに関する権利を放棄する準備はどの程度できているのでしょうか。
また、気候変動が政策と行動、そして地域社会の持続可能性とより広範な地政学的課題にもたらす影響も未知数な部分が多いといえます。
一部の産業、特に広い意味でインフラに含まれる産業にとっては、この危機は成長の原動力のひとつでもあります。もちろん、多くの業種にとって、未来はとても厳しいものになるでしょう。しかし、これらの大きな打撃を受けた産業であっても、究極的には次のような新しいチャンスがあります。