withコロナ時代におけるDXの必要性とブロックチェーン技術の重要性

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また、社会秩序の維持においても、信頼にあらためてフォーカスがあたっています。「サピエンス全史」の著者として知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏は新型コロナウイルス感染症の流行に際して以下の声明を発しました。

──全体主義的な監視政治体制を打ち立てなくても、国民の権利を拡大することによって自らの健康を守り、新型コロナウイルス感染症の流行に終止符を打つ道を選択できる。監視政治体制を構築する代わりに、科学と公的機関とマスメディアに対する人々の信頼を復活させる時間はまだ残っている。新しいテクノロジーも絶対に活用するべきだが、それは国民の権利を拡大するテクノロジーでなくてはならない。(2020年3月20日「フィナンシャル・タイムズ」紙より抜粋)──

ハラリ氏は、この声明の中で新型コロナのような感染症に備えて、人々の生命維持を盾に政府や大企業が個人を監視し情報を集める世の中ではなく、テクノロジーによって正しい情報を共有し個人の権利が保たれる社会の必要性を説いています。

私は、ここでハラリ氏が言及する「個人の権利を保ったまま情報を共有しあい信頼を築く」技術こそが、ブロックチェーンだと理解しています。

デジタル空間で信頼を築くために必要な条件


既存のシステムの多くは、それぞれが閉じた系であり、システムを横断して「どれが本当に正しい事実なのか」を確かめることに不向きでした。

こうした閉じたシステム間で「確からしい事実」を共有するためには、システム上でのデータではなく物理的な書面などをマスターデータとして扱う、もしくは人的作業によってシステム間の情報の照合・調整を行う必要がありました。すなわち、人間がシステムとシステムの間で確からしさを補完してきたのです。

ところが今、私たちは物理的に空間を共有できません。そのため、これまでのよう人間がパッチを当て続ける訳にはいかなくなりました。オフィスに集まり複数の担当者がエクセルシートなどの帳尻を合わせるのではなく、そもそも帳尻の合った状態で確かなデータがデジタル完結で共有できる基盤が必要なのです。

それでは、デジタルシステムが確からしさを担保するために必要な機能要件は何でしょうか?


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第一に、データが不可逆に記録されること。デジタル空間では、データが簡単に修正されたり、削除されたり、コピー増殖してしまいます。簡単に決定事項や取り決めが反故にされてしまう環境下では相互不信が生じ、信頼関係を築くことは非常に困難です。

第二に、一貫性のあるデータを関係者一同が確認できること。それぞれが別々にデータを保管していれば取引の都度に照合コストが生じますし、故にどれが「本当の事実」だったのかが分かりづらくなってしまいます。

第三に、データ自体が消失したり、システム全体が機能不全に陥らないこと。単一のマスターデータに依存するようなシステムは、これが単一障害点として全ての取引が停止する可能性があります。
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文=森川夢佑斗

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