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SNSマーケティングを社会学的に考える

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この連載を始めるにあたって、筆者は初回記事にこのような導入を付記しておいた。

“それ(SNS)を効率的に運用してどのように目的を達成するかという「メディア」的な側面だけでなく、人々のコミュニケーションが編まれ続け、不可思議なことが起こってしまう「ソーシャル」な場の特性にも分析の視点を届かせたい”

人々のコミュニケーションは、それが重なれば重なるほどに、時に「意図せざる結果」をもたらすことがある。その見通せなさこそが、良くも悪くも人と人とのコミュニケーションの特性であるが、いまそれは新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が世界的に猛威をふるう中でより鮮明になってきているように思われる。

日本国内の感染者数の増加率は落ち着きを見せてきている。しかしながら、治療薬やワクチン開発といった要因がどうなるか次第ではあるものの、私たちは中長期的に新型コロナと抜き差しならぬ関係性を続けていくことになるのは間違いないだろう(筆者は当分野の専門家ではなく、あくまでもさまざまな報道や専門家の意見を摂取しての一生活者の雑感に過ぎない)。

その意味でも、新型コロナとSNSとの関係性についての現状と課題をまとめておくことは意義があると思う。現に、最近のいくつかの取材などでもこうしたテーマでインタビューされることが増えている。多くの人の課題意識に触れるものであるためだろう。

その際、筆者二冊目の単著となる『SNS変遷史─「いいね!」でつながる社会のゆくえ―』(2019年、イースト新書)のキーワードを参照しながら考察を進めていきたいと思う。それが、ファスト/スローだ。

ファスト/スローなコミュニケーション


SNSは社会のコミュニケーションの速度を上げた。手軽なシェアとその拡散を可能にしたことで、誰もが発信者となり、情報がまたたく間に広がるような環境が確立された。また、もともとインターネットは非同期的なコミュニケーションが主だったが、SNSによってリアルタイムウェブの扉が開き、同期的なコミュニケーションが展開されるようになったことで、情報流通の「熱」のようなものが触知されるようにもなったのだった。

特にTwitterは「世の中ごと」視点のSNSとしてその性質が顕著で、Instagramも初期はビジュアルでつくりこんだ世界観をストック的に表現するスローな性質が目立ったが、近年日本では特に若者中心にストーリーズの利用率が高まっていて、ファストなコミュニケーションが優位になっている。

なお、「ファスト/スロー」の概念枠組みは、行動経済学者のダニエル・カーネマン(2002年ノーベル経済学賞を受賞)から借用している。

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カーネマンは、人間の思考には「速い思考」と「遅い思考」があると述べている。それぞれ別々の駆動原理に基づいて目の前の現象を解釈し情報処理を行っており、その仕組みを「システム1」「システム2」と呼んでいる。

「速い思考」は、目の前の状況に素早く対応するため、過去の経験則やバイアスを活用する。それによって、さっと手早く判断するわけだ。「これは食べられるか?」「目の前にあらわれた人は敵か味方か?」など。

それで解決できない問題に対しては、人はシステム2を駆動して「遅い思考」で熟慮する。「この人はひどいことを言っていて悪者に見えるが(速い思考)、何か別の意図をもって発言しているのではないか…?」など。

文=天野 彬

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