米国のCDLF(コミュニティ開発ローンファンド)のひとつである「非営利融資ファンド」(Nonprofit Finance Fund:NFF)の調べによると、おおむね6か月以上の業務継続が可能なキャッシュを手元に置いているNPOの割合は、わずか25%だという。
こうした事情から、NPOが寄付を募るための切り札として、文章の力に頼る機会は増える一方だ。そんななか、人工知能(AI)を活用した英文ライティング支援サービスを提供するグラマリー(Grammarly)が支援策を発表した。自社の有料会員向けサブスクリプションサービスを期間限定で無償提供する対象に、全世界のNPOを含めるというのだ。
現在の計画では、一定の条件を満たす団体に対して、2020年いっぱい、有料サービスへの無料アクセスを提供する予定だ。グラマリーでは、事前に財務情報の提供を求めることは一切ないとしており、今回の決定により米国内だけで最大5億ドル分の製品が無償提供される計算になると述べている。
「こうした団体の多くがミッションを遂行する際にコミュニケーションがどんなに重要かを考えた時に、この決定の意義は大きい」と、グラマリーの最高経営責任者(CEO)、ブラッド・フーヴァー(Brad Hoover)は胸を張る。2011年に同社CEOに就任する以前、フーヴァーはベンチャーキャピタルのジェネラル・キャタリスト(General Catalyst)の投資担当者だった経歴を持つ。
「当社は今回、この無償提供の仕組みを、非政府組織(NGO)およびNPO向けに、特別に作成した。これによってこれらの組織は、コミュニケーション業務に余計な時間を取られることなく、現在取り組んでいる本業に集中する自由を得られるはずだ」
その名前からもわかるように、グラマリーは創業当初、文法(グラマー)に特化したサービスだった。同社はマックス・リトヴィン(Max Lytvyn)とアレックス・シェフチェンコ(Alex Shevchenko)、ディミトロ・リーデル(Dmytro Lider)という3人のウクライナ人により、キエフで創業された。3人はこれ以前にも、学術論文の盗用を検出するソフトウェアを開発し、ブラックボード(Blackboard)に売却した実績があった。現在、グラマリーの本社はサンフランシスコにあるが、280人いる従業員の大部分は、今でもキエフのオフィスに勤務している。