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2020.04.22 16:30

政府支援を要請する「富豪」ヴィクトリア・ベッカムに集まる批判

Jeff Spicer/BFC/Getty Images for BFC

Jeff Spicer/BFC/Getty Images for BFC

自らの名を冠したブランドの従業員の一部を一時帰休とすることを決めたヴィクトリア・ベッカムが、激しい非難にさらされている。

保有資産が推定3億3500万ポンド(約443億円)とされるにもかかわらず、スタッフのうち30人にレイオフを通知。さらに、従業員を雇い続ける事業主を対象とした英政府の支援策の適用を申請したためだ。

英政府は4月20日、国内の企業が従業員の雇用を維持する場合、一時帰休とした従業員の給与の80%(1人当たり月額2500ポンドまで)を補助する雇用維持制度の申請の受け付けを開始した。

「ヴィクトリア・ベッカム」の従業員が受け取った手紙には、当面は給料の80%が支払われると説明されているという。また、広報担当者によれば、一時帰休の期間は「今のところ」2カ月とされている。

申請が認められれば、自身が所有するハンドバッグの価値だけでも総額およそ150万ポンドとされるヴィクトリアが、国民が収めた税金から毎月7万5000ポンドを受け取ることになる。

発言に影響力があることで知られるテレビ番組司会者のピアス・モーガンは同日朝に放送された自身の番組で、ヴィクトリアを「甘やかされたプリマドンナのミリオネア」と酷評。「経営難に陥った虚栄心のための事業」を救済するために、税金を使うべきではないと主張した。

オリバー・ダウデン文化相はこれに対し、企業は本当に必要とする場合にのみ、政府に救済を求めるべきだと発言。「すべての個人と企業が、納税者たちに頼らなくてはならないのか、と自ら問いかけてみるべきだろう」述べている。

ソーシャルメディア上では、人気アイドルグループ「スパイス・ガールズ」のメンバーだったヴィクトリアが自身の資産を使わず、政府の救済策を「利用している」との批判のコメントが相次いでいる。

ヴィクトリアと夫で元サッカー選手のデビッド・ベッカムはわずか2週間前、米フロリダ州マイアミにある物件のペントハウスを1700万ポンドで購入したばかりだと報じられている。

夫妻は驚くほどの数の不動産を所有しているとされる。ロンドのホランドパークにある邸宅の価値は、約2500万ポンド。また、コッツウォルズにある古い農場の納屋を改装した住宅(ベッカム一家は自宅待機が始まって以来、ここに滞在中とされる)は、600万ポンド相当といわれている。

個人としては巨額の資産を保有するヴィクトリアだが、その運営するブランドは実際のところ、2008年の立ち上げ以来、利益を上げていない。2018年には1230万ポンド、その前年には1030万ポンドの損失を計上。2017年にはデビッドが赤字額を補填したという。

もちろん、こうした行動に出ている富豪はヴィクトリアだけではない。ヴァージン・グループ創業者でより多額の資産を持つビリオネア(保有資産10億ドル以上)のリチャード・ブランソンもまた、従業員を一時帰休させているほか、過去14年間にわたって税金を納めていない英国の政府に対し、5億ポンドの支援(融資)を要請している。

そのほか、株主に配当金およそ1億7400万ポンドを払ったイージージェットも、納税者からの支援を求めている。

ただ、これらは支援を必要とする企業の氷山の一角にすぎない。政府がウェブサイトで雇用維持制度の申請の受付を開始してから最初の30分間だけでも、約6万7000件の申し込みがあったという。

編集=木内涼子

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