radiko躍進の舞台裏──リスナーの声の可視化から見出した、3つの役割

radiko業務推進室長 坂谷 温氏

※この記事は、2020年2月にXDで公開されたものを転載しております。

オーディオの電源を入れ、アンテナを立て、周波数を合わせて……。あの頃と比べたら、ずいぶんと手軽にラジオを聴けるようになった。これを可能にしているのが、2010年にスタートしたインターネットラジオサービス『radiko(ラジコ)』だ。

リアルタイムで全国のラジオを聴ける「エリアフリー」や、過去1週間の放送をさかのぼって楽しめる「タイムフリー」など、従来のラジオでは実現できない機能も備える。URLで過去のラジオ番組を共有できる「シェアラジオ」や他番組のレコメンドなど、Webサービスならではの価値も付加している。

ラジコはラジオの楽しみ方をどう変えてきたのか。そして、変えようとしているのか。radiko業務推進室長、坂谷 温氏に話を聞いた。


「届ける」のアップデートが、リスナーの解像度を上げた


「ラジオには元々良質なコンテンツがたくさんある。ラジコが注力するのは、リスナーがラジオをより楽しめるよう、コンテンツを『貯めて』、探しやすいように『整理し』、適切に『届ける』ことなんです」

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radiko業務推進室長 坂谷 温氏

radiko社内では前述した3つの役割を総括し、『オーディオコンテンツロジスティクス』と表現するという。この考え方は、その出自にも起因する。

ラジコは、元々電波ラジオの難聴取問題を解決するために、在京・在阪民間放送局が中心となって立ち上げたサービスだ。山間部はもちろん、ビルの高層化や増加に伴い、都心部もラジオ電波が届きにくい傾向がある。そうした課題に対し、多くの人がラジオを聴ける環境を整えるべく、会員登録不要、かつ無料で楽しめるインターネットラジオを始めたのだ。

つまり、ラジコは「届ける」手段として生まれた。それが「貯める」「整理する」という役割を持つにいたったのは、ユーザーと向き合う中でのこと。ラジコはインターネットを経由するがゆえ、ラジオリスナーの行動データを細かく取得できる。その環境もあり、ラジコはユーザーを見ながらサービスを作り込んでいった。

坂谷氏「例えば、ある番組では毎回特定の時間に演歌を流すのが番組の特徴になっていました。コアファンほどその時間を楽しみにしているのかなと思っていたのですが、データで見るとその時間は一気にログが低下していたんです(笑)。そんな情報も、ラジコだからこそ取得できます」

MAUは750万人ほど。男女比は6:4、平均年齢は44〜45歳で、朝の8時〜9時の利用が最も多い。こうした全体像から、番組中のログの変化まで、膨大なデータが彼らの資産になっている。データは放送局側へも共有され、番組の改善につなげているという。また、ユーザーの“声”も積極的に収集する。その最たる例が、年に一度おこなわれる大規模調査だ。

坂谷氏「ラジコでは、年に1回ウェブサイト上でアンケートを募っています。直近は、3万7千人の方々から回答をいただきました。設問数は40個ほどある長めのアンケートなのですが、コアユーザーからライトユーザーまで毎年熱心にフィードバックをいただけています」

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文・取材=葛原信太郎|編集=小山和之|撮影=須古恵

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