イーロン・マスクは、3月31日に「FDA(食品医薬品局)認可の人工呼吸器を出荷する」とツイートしていた。しかし、The Weekによるとテスラが出荷したのは、医療現場で人工呼吸器と呼ばれるものではなかった。テスラが病院に届けたのは、レスメド社製のBiPAPやB-PAPと呼ばれる機器で、睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられるC-PAP装置だったという。
この装置は患者の顔全体や鼻・口にマスクを装着して利用するが、重症化した新型コロナウイルス感染症の治療には適さないという。コロナウイルスの重症患者に必要なのは、気管にチューブを入れる本格的な人工呼吸器だ。
人工呼吸器は呼吸の代行や補助を行うが、C-PAPやBiPAP機器にはそれらを行うことができない。The Weekによると、レスメドCEOのMick FarrellはテスラがBiPAPを1000台購入したことを認め、イーロン・マスクが迅速に病院に提供したことを称賛した。
Farrellのツイートにマスクも返信したが、一部のユーザーが挿管式の機器でないことを指摘すると、批判的な意見が急増した。
NPRは3月27日の記事で、イーロン・マスクが寄付したものと同タイプの機器が、ワシントンの養護施設で新型コロナウイルスのアウトブレイクを引き起こした可能性を指摘していた。記事によると、感染患者が機器を使って吐き出した息を他人が吸い込んでウイルスに感染する、いわゆる「エアロゾル感染」が生じた可能性があるという。
CDC(疾病管理予防センター)は、最近になって新型コロナウイルスが飛沫を介して拡散するため、「通常の呼吸や会話だけで感染する恐れがある」と警鐘を鳴らしている。C-PAPやBiPAPの機器は強制的に利用者の息を空気中に排出するため、利用者が感染に気づいていない場合、ウイルスを拡散する危険性があるという。
イーロン・マスクが、彼が寄贈した機器と、医療現場で求められている人工呼吸器との違いを理解しているかどうかは不明だ。彼は寄付を発表して以降、人工呼吸器に関するツイートをしていない。マスクとテスラにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。