また、他国を見れば、感染リスクへの危機感から「家を出たくない子供たち」が急増しているとの報道もある。教育の遅れや進捗をどう取り戻すかという問題もさることながら、ショックを克服するためのメンタルケアも重要な課題として浮上してきそうな気配だ。
英語塾に行かなくとも、AI教師と学習ができる
そんななか、教育コンテンツのデジタル化に注目が集まると同時に、学習をサポートする人工知能(AI)の利活用にも期待が高まっている。3月下旬、中国ではアリババと人民教育出版社が小学校の公式教材をデジタル化。加えて、AIによるテキスト読み聞かせや、宿題の個別指導ができる学習システムを公開している。同システムはスマートスピーカーと連動しており、音声コマンドを使った利用も可能だという。
また大連市唯一の「準ユニコーン企業」として遼寧省科技庁の認定を受けている大連厚仁教育科技は、幼稚園から高等学校の学生向けに「出口成章」というAI&ビッグデータを用いた教材アプリを公開。2020年3月時点で、湖北省45万人、遼寧省88万7000万人、北京市20万人の学生がアプリを利用していると報じられている。
韓国では最近、次世代ユニコーンとして注目されるAIベンチャー・マネーブレインが、AI英語教育サービス「Speak Now」をアップグレード。キッズおよびジュニア用のコンテンツを大量に追加した。マネーブレインは、韓国で活動するサム・ハミントン氏(オーストラリア出身)、サム・オキア氏(ガーナ出身)など有名タレントをAIで再現した「仮想英語教師」をサービス上で実用化してきた。
そこに今回、3歳から中学生までの英語学習コンテンツが追加された形だ。コンテンツ内容は、8万個の文章を使用した会話シチュエーション500パターン、また2000冊の英語本をAIおよび仮想英語教師が読んでくれるというものになっている。「英語塾に行かなくとも、AI教師と学習ができる」というのがサービスのウリだ。
新たな教育が社会に根付く可能性も
人工知能をオンライン学習に利用しようとする際、現段階では音声認識や音声合成、チャットボットとのやり取り(自然言語処理)、もしくは学習状況のパーソナライズがポピュラーな用途となっていきそうだが、今後どんな新たな使い方が登場するか注目したところだ。
一方で、個々人がデジタルやAIを駆使したパーソナライズ教育を受ける機会・環境が拡大するということは、教育の在り方そのものが大きく変容していく契機になりうる。それは、画一的な教育が廃れ、個々人の才能や好奇心を開花させることに特化した新たな教育が社会に根付く可能性も含む。コロナ禍は一転、「教育のデジタルトランスフォーメーション」を実現するきっかけとなるのか。世界の変化に目を凝らしていきたい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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