「同調圧力に屈せず、多くの異論を」岩田教授に聞くコロナ危機対策

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新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都では5日連続で40人以上の感染者が確認され、3月29日までに日本全体の感染者数は2600人を超え、60人以上が亡くなった。各国の増え続ける感染者数と対策はリアルタイムで比較され、様々な批判や意見が飛び交っている。

日本の感染症対策の第一人者である神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授は、同調圧力が高い日本では「勇気がいる」と話しながらも、自身のブログや動画を通じて意見を積極的に発信。日本の新型コロナ対策について一定の評価をしつつ、警鐘を鳴らしてきた(関連記事:新型コロナ、日本は本当に感染がコントロールできているのか)。危機の時代に何が求められるのか。岩田教授に話を聞いた(インタビューは3月26日に実施)。


──感染者の増加が続く東京都では3月25日に小池知事が外出自粛を要請しました。この増加についてどう受け止めていますか。

東京都は異なるフェーズに入ったと思う。25日はPCR検査数が108件で41人の陽性が判明し、陽性率がかなり高い(編集部注:検査件数の計上日と陽性の判明日が合致するか不明だが、東京都の発表によると前日の24日の検査数は86件、陽性は17人)。検査が追いついておらず、感染の実態が掴めていない。

世界を見ていれば感染者が一気に増えることは予想できたので、1日40人程度の増加は想定内だったはずだ。それ以上の感染爆発が東京でも起きる可能性はある。

(小池都知事の)危機的なメッセージは、本当は患者数が増える前、(緊急会見をした25日の)5日ぐらい前に出すべきだったと思う。しかし、(延期が決まった24日まで)オリンピックの開催が念頭にあったために、東京都はネガティブなメッセージは出せなかったのではないかというのが私の推測だ。無論、関係諸氏は否定するだろうが。オリンピックに対する忖度が危機対応を遅くして、失敗した。

全体的にはこれまでの日本の新型コロナ対策は、ピークを抑えるミティゲーションとクラスター追跡でうまく対応ができていた。PCR検査が少ないという批判があるが、PCR検査は偽陰性が出やすく、運用は難しい。PCR検査を可能性が高い人に絞ることはピークを抑えるという目的にはあっていた。

しかし今後は、東京とそのほかの地域で分けて考える必要がある。私のいる兵庫県では、(クラスターが発覚した)3月前半は危機的な状況にあったが、その後はかなり抑えられている。東京のように感染者数が増えている地域と、抑えられている地域で、それぞれの対策を考えなくてはならない。

──東京では今後、どのような対策が必要になってくるのでしょうか。

いままでの対応では不十分だ。一人ひとりが外出しないなど、行動を変える必要がある。

また、感染者数の実態が掴めていないため、人口をもとにした抗体検査で感染者数を出すべきだ。(編集部注:現在、新型コロナウイルス検査に用いられているPCR検査は、鼻や口の奥の粘膜細胞を採取し、ウイルスのDNAの断片を増幅させて陽性か陰性かを判定する。抗体検査は、一度かかった人が獲得した免疫の抗体が血液中にあるかどうかを探す)。

現在、感染爆発がすでに起きているという人と起きていないという人の間で論争になっているが、(数を把握するための)検査はしていないので実際のところはわからない。水掛け論をしても仕方がないし、これほど感染者が増えている段階なので、(数を把握するための)人口をもとにした抗体検査をすべきだと考える。実際、イギリスではすでに350万個の抗体検査キットを準備している。
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編集=成相通子

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